2023年01月16日

グッゲンハイムの謎

スパーク姉弟シリーズ A
シヴォーン・ダウド 原案
ロビン・スティーヴンス 著
越前敏弥 訳 「The Guggenheim Mystery」
装画 船津真琴

<あらすじ>
夏休み中の8月8日、スパーク姉弟とその母フェイスは、グッゲンハイム美術館に勤務するグロリアとその息子サリムに会うため、ニューヨークを訪れた。
翌日、改装中のグッゲンハイム美術館に特別に入館さてもらう。館内を見学していると、突然、白くて濃い煙が立ち上り、火災警報が鳴った。館内にいる者は大急ぎで美術館の外に避難したが、火事は見せかけで、その間にカンディンスキーの名画〈黒い正方形のなかに〉が盗まれていた。そして犯人だと疑われたグロリアが逮捕されてしまう。
スパーク姉弟とサリムは、グロリアの無実を証明するため、盗まれた絵と真犯人を探すが・・・

<感想>
主人公であり探偵役でもある12歳のテッドは、他の人とは違う不思議な頭脳(訳者によればアスペルガー症候群とのこと。)を持つ少年。前作『ロンドン・アイの謎』のときは、姉のカットと二人三脚で事件を解決したが、本作では姉弟と従兄が力を合わせて謎解きに挑んでいる。
3人はニューヨーク中を冒険して、仮説をひとつずつ消していき、真実を推理して、見事に事件を解決するのだ。前作同様にテッド少年の博識も面白く、とても楽しい青春ミステリだと思う。
満足度 5.gif



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テス・シャープ『詐欺師はもう嘘をつかない』エリー・グリフィス 『窓辺の愛書家』
   


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posted by ももた at 08:55| 東京 ☔| Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月27日

熊と小夜鳴鳥

冬の王1(3部作)
キャサリン・アーデン 著
金原瑞人/野沢佳織 訳 「THE BEAR AND THE NIGHTINGALE」
カバーイラスト 海島千本

<あらすじ>
14世紀半ば、ルーシ北部の小さな村レスナーヤ・ゼムリャ。
領主の妻マリーナは、金袋(カリタ)と仇名されたモスクワ大公イワン1世の、不思議な妃の唯ひとりの子だった。1年が終わろうとする11月のある日、マリーナは4人の子供たちを年老いた乳母ドゥーニャに託し、末娘ワシリーサ(ワーシャ)を出産して死んだ。
姉のオリガは普通の娘で美しく従順だが、ワーシャは祖母の血筋を受け継ぎ、人には見えない精霊(チョルト)を見る特別な力を持っていた。6歳のとき、雪の降る森で道に迷い、霜の王にして冬の王でもあるマロ―スカとその双子の弟メドベードに出会う。
その後、領主ピョートル・ウラジーミロヴィチは、長男ニコライ(コーリャ)と次男アレクサンドル(サーシャ)を連れてモスクワへ旅立ち、新しい妻アンナ・イワノヴナを連れて戻った。
アンナはモスクワ大公(マリーナの腹違いの兄)の娘で、人には見えない精霊を見て悪魔と呼び、いつも怯えていた。
その年の秋、コーリャが近隣の貴族の娘と結婚して家を出た。その後、若きセルプホフ公(ウラジミール・アンドレーエヴィチ)が村を訪れ、14歳のオリガと婚礼を挙げてモスクワへ連れ帰った。サーシャは、モスクワ大公の幼い跡継ぎ王子ドミトリーを守るため、父親の反対を押し切ってこの旅に同行し、修道士セルギイの修道院に入った。そして、ピョートルとアンナの間に娘イリーナが誕生した。
日が流れ、季節も流れ、ワーシャは成長し、継母アンナを避けて7年近くの歳月が平穏に過ぎた。ワーシャは用心することを学び、あらゆる精霊と密かに親しくしていた。
ワーシャが14歳になった年、モスクワ大公国の摂政であるアレクセイ府主教は、ドミトリー王子の即位を計画する。若き司祭コンスタンチン・ニコノヴィチは大変な美貌の持ち主で、彼の描く聖画のイコンは人々を惹きつけていた。府主教は、王子の公位継承を妨げる恐れのある司祭を、僻地レスナーヤ・ゼムリャへ厄介払いする。
夏の盛りに村に到着した司祭は、悪魔を怖れるアンナの告白を聞き、村人たちの精霊信仰を厳しく禁じた。
村人たちが古いしきたりを疎かにして捧げ物を止めたため、人々を悪しきものから守っていた精霊たちの力も弱くなって行き、「食らうもの」が目覚めた。精霊たちの警告や予言は謎めいていて、ワーシャには解らなかった。
しかし冬至の頃、冬の王がワーシャを迎えに来る。娘を愛しているピョートルは、その前にワーシャを裕福な男に嫁がせようとするが、跳ねっ返りの娘は婚約者を怖気づかせて追い返してしまう。
一方、アレクサンドル修道士となったサーシャは、「タタールのくびき」から逃れるべく画策していた。ドミトリー大公がキプチャク・ハン国と戦うと決断したとき協力するよう、キリスト教徒の一族である父に使者を送るが、タタール人の包囲を恐れるピョートルは断った。
やがて厳しい冬が到来、寒さと闇の魔物が村を襲う。ワーシャはすぐ上の兄アリョーシャ(リョーシカ)に助けてもらい、魔物と戦うが・・・

<感想>
自由に自分らしく生きようとする少女の成長と奮闘を描いており、湖や森の精、家や庭の精などのキャラクターがユニークだ。
厳しい風土と農場の生活、女性軽視と偏見、恐怖で人を支配するキリスト教神父、土地に根付いている精霊信仰、当時の歴史などが相まって、凄く面白い長編ファンタジーだと思う。
そして、主人公よりもその父親が凄くカッコイイ。ピョートルは、息子を束縛しないし、進路の邪魔もしない。領主としての責務や家長の役割を重視して、彼らの保護と安全を計る。その姿勢は頑としてブレない。子供たちと魔物の間に立ちはだかり、「領地から出ていけ。」「男は自分以外の者の命を身代わりに差し出したりしない。我が子の命なら尚更だ。」と言い放つ。魔物に挑むピョートルの勇気と大きな父性愛に感動した。変わり者と陰口を叩かれても、兄妹仲が良いのも好いな。
また、舞台となるのはロシア発祥の地とされる地域。最近、ウクライナ関連の本を読み漁っているので、「タタールのくびき」や「ルーシの洗礼」など、勉強になった。続編が楽しみでならない。
満足度 5.gif



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『ボグ・チャイルド』  『影を呑んだ少女』
   


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posted by ももた at 09:21| 東京 ☀| Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月21日

ボグ・チャイルド

2009年カーネギー賞受賞
シヴォーン・ダウド 著
千葉茂樹 訳 「BOG CHILD」
装画 塩田雅紀

<あらすじ>
1981年、紛争地北アイルランド。アイルランド人でカトリックの高校生・ファーガス・マッキャンは、両親と妹たちと国境近くの村に暮らしている。マッキャン家は民宿を営んでいるが、テロが激しくなると、客足が止まってしまった。18歳のファーガスはこの土地を離れ、イギリス本土の大学に進学して医者になることを目指していた。
6月のある日、タリー叔父と国境の南側の湿地(ボグ)へ泥炭の盗掘に行き、女の子の遺体を発見する。
泥炭の作用で生々しく保存された遺体には絞殺の跡があり、金属を編み上げたケルト風の腕輪をしていた。
Aレベル試験が迫る中、ファーガスは少女(ボグ・チャイルド)のことが頭から離れなくなる。
一方、過激な活動で知られるアイルランド共和軍(IRA)暫定派の一員である兄・ジョーは、10年も刑務所暮らしをしていた。アイルランドの統一を目指し、獄中でハンガー・ストライキを敢行する。死へのカウント・ダウンが始まった。
ファーガスは、兄のハンガー・ストライキを止めるため、IRAの運び屋になるが・・・

<感想>
サッチャー政権下の1981年、刑務所に収容されていたアイルランド共和軍(IRA)の暫定派(プロヴォ)とアイルランド民族解放軍(INLA)のメンバーの一部が、ハンガー・ストライキを行った。その結果、10名が餓死した。刑務所付きの司祭の仲裁により、ストライカーのうち数名の親が、昏睡状態になった息子を病院に移して点滴を受けさせることに同意したが、残りのメンバーは仲裁に応じなかった。
本書はこの史実を題材にしており、紛争地で暮らす少年の日常、家族や故郷への思いと未来への渇望を描いている。
巧みなストーリー展開に、湿地の少女メルの悲しい物語、ウェールズの炭鉱の町から国境の検問所に送り込まれたオーウェイン・ジェンキンズ二等兵との友情、考古学者の娘との恋、兄の運命などが相俟って、読者を惹きつける。
そして、まるでミステリのような、終盤の逆転劇が素晴らしい。凄く面白いヤングアダルト小説だと思う。
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エリン・ハート 『アイルランドの棺』 『アイルランドの哀しき湖』
   


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posted by ももた at 08:58| 東京 ☀| Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。