児玉敦子 訳 「ISLAND of WHISPERS」
カバーイラスト・挿絵 エミリー・グラケッド
<あらすじ>
レイフとマイロ兄弟の父は、死者の魂を船に乗せて〈壊れた塔の島〉まで送り届ける、マーランク島の渡し守をしていた。
ある日、領主の14歳の娘ガブリエルが病死した。
その翌朝、母親が渡し守のもとを訪れ、娘の青い靴を差し出した。そうしなければ、靴を手に入れた死者が島をうろつき回るのだ。死者の目を覗き込んでしまった者は、直ぐに死を迎える。
ところが領主は、魔術師の闇の業で娘を蘇らせようと計画していた。娘の靴を取り戻しに来て、渡し守を殺してしまう。レイフは囚われの身となった。
そこでマイロは、6人の死者の魂を送り届けるべく、〈夕べの雌馬〉号で出航する。
しかし領主の大きな交易船〈運命の女神〉号が、武装した家来と黒魔術師2人を引き連れて、躍起になって〈夕べの雌馬〉号を追っていた・・・
<感想>
素敵な挿絵が多く、楽しくて、絵本のようにすらすら読める。そして最後は感動的な物語になっている。
主人公は、父から渡し守の助手にも無理だと言われていた。家族の中で自分だけが弱くて、役立たずだと思っている臆病な少年。渡し守の知識も経験も無くて、危険な旅の仲間は死者の霊だけ。それに〈壊れた塔の島〉は、いつも同じ場所にあるわけではない。ぶっつけ本番の航海である。
未知の不気味な海域、喪失を養分にする疑念と困惑の物体、死者の領域、死者の通過点である〈壊れた塔の島〉でのエピソードなどが相まって、凄く面白い冒険ファンタジーだと思う。