2022年09月12日

戦争は女の顔をしていない 3

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 原作
小梅けいと 画
清水螺旋人 監修

<内容>
ノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』を漫画化したもの。

「第12話 お母ちゃんお父ちゃんのこと」
「第13話 はじめてのメモから(執筆日誌より)」
「第14話 パルチザンの斥候アントニーナ・アレクセーエヴナ・コンドラショワの話」
「第15話 准医師アンナ・二コラエヴナ・フロロヴィチ中尉の話」
「第16話 ふと、生きていたいと熱烈に思った」
「第17話 子供の入浴とお父さんのようなお母さんについて」

<感想>
ロシアでは大祖国戦争と呼ばれる第二次世界大戦の独ソ戦(1941〜1945)を描いており、第14話と第16話(衛生兵タマーラ・ステパノヴナ・ウムニャギナの話)は、とてもハードな内容だった。
ファシストは子供を井戸に放り込んだ。パルチザンの若者をノコギリで丸太のように切り分けた。ドイツの戦車の列が子供たちを跡形もなく押し潰した。
スターリングラードには人間の血が染み込んでいない地面はなかった。町中が破壊され尽くして建物もめちゃめちゃ、負傷者は塹壕、地下壕、地下室など、至る所に転がっていた。人間が人間に襲い掛かっていく恐ろしい白兵戦。想像を絶する凄まじい戦場だった。
戦争が終わっても至る所に地雷や不発弾があって、4年間戦い抜いて生き残ったのに自分の故郷の畑で戦死した。
負傷したドイツ兵が地面に転がって土を掴んでいるのを見たソ連の兵隊は、「俺たちの大地に手を触れるな。お前の土はお前の国にあるんだ。」と言っていた。今ロシアに攻め込まれているウクライナの人々も同じ気持ちだろうな。
人間はどこまで残虐非道な所業ができるのだろう。普通の人間を憎悪の塊、非人道的な野蛮人に変えてしまう戦争は、本当に恐ろしいと思った。
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2022年09月07日

戦争は女の顔をしていない 2

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 原作
小梅けいと 画
清水螺旋人 監修

<内容>
ノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』を漫画化したもの。

「第8話 人間は戦争よりずっと大きい」
「第9話 狙撃兵マリヤ・イワーノヴナ・モローゾワ(イワーヌシュキナ)兵長の話」
「第10話 モスクワに向かう汽車の中にて」
「第11話 母のところに戻ったのは私一人だけ」
「第12話 お母ちゃんお父ちゃんのこと」

<感想>
ロシアでは大祖国戦争と呼ばれる第二次世界大戦の独ソ戦(1941〜1945)を描いており、ベラルーシとウクライナも戦場だった。
スターリングラード近郊ではドイツ兵の死体が至る所に転がっていて、砲弾を運搬していた女性は、車輪の下で頭蓋骨が折れる音が聞こえると嬉しかったと言う。たじろぐなぁ。
そして、戦争中に75名を殺害した狙撃兵マリヤ・イワーノヴナ・モローゾワは、終戦後、ミンスクの車両工場で経理をしていた。ちゃんと女兵士たちの戦友会もあり、原作者のところには国中から手紙が届くようになったそうだ。
第11話は、戦車部隊の衛生兵ニーナ・ヤーコヴレヴナ・ヴィシネフスカヤの話。
第12話は、ドイツ軍に占領されたベラルーシの村の話。捕虜を身内と偽り引き取ったが、ドイツの司令部に密告された。ドイツ軍は捕虜を村はずれに連れて行き、銃殺したそうだ。そして退却するときは村に火を放ち、何もかも持って行った。戦争以外の思い出がないと言う老婆の話は重いな。
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2022年08月31日

戦争は女の顔をしていない 1

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 原作
小梅けいと 画
清水螺旋人 監修

<内容>
ノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』を漫画化したもの。

「第1話 従軍洗濯部隊政治部長代理ワレンチーナ・クジミニチナ・ブラチコワ・ボルシチェフスカ中尉の話」
「第2話 軍医エフロシーニヤ・グリゴリエヴナ・ブレウス大尉の話」
「第3話 狙撃兵クラヴヂヤ・グリゴリエヴナ・クローヒナ上級軍曹とマリヤ・イワーノヴナ・モローゾワ(イワーヌシュキナ)兵長の話」
「第4話 衛生指導員マリヤ・ペトローヴナ・スミルノワと看護婦アンナ・イワーノヴナ・ベリャイの話」
「第5話 高射砲兵クララ・セミョーノヴナ・チーホノヴィチ軍曹と通信兵マリヤ・セミョーノヴナ・カリベルダ軍曹、斥候リュボーフィ・イワーノヴナ・オスモロフスカヤ二等兵の話」
「第6話 一等飛行士アントニーナ・グリゴリエヴナ・ボンダレワ中尉と航空隊クラヴジヤ・イワーノヴナ・テレホワ大尉の話」
「第7話 書記エレーナ・ヴィレンスカヤ軍曹と、機関士マリヤ・アレクサンドロヴナ・アレストワ、射撃手ローラ・アフメートワ二等兵の話」

<感想>
ロシアでは大祖国戦争と呼ばれる第二次世界大戦の独ソ戦(1941〜1945)を描いており、彼女たちは祖国防衛のために立ち上がった志願兵だった。
第1話は、1941年キエフの孤児院から始まる。そこにはスペイン市民戦争の1937年にソ連へ連れてこられた子供たちがいた。成長したらロシア兵にされるのかな。そして洗濯部隊の女の子たちはみなベラルーシとウクライナから来ていた。
戦争が終わったとき、ワレンチーナ・ブラチコワは、ドイツの村の縫製工場に残っていたミシンを彼女たちにプレゼントしたそうだ。
ソ連軍は満州でも、膨大な賠償金の支払いのために日本が無傷で温存した施設や設備を取り外し、ごっそり持ち去った。そして2022年、ウクライナでもロシア軍兵士は同じことをやっている。この国の本質って変わらないな。
第2話は、1941年ミンスク市の姉妹2人の別れから始まる。ドイツに進軍したとき、ある村の女性2人が戦争なんかないみたいに庭でコーヒーを飲んでいるのを見て、ベラルーシはすっかり荒廃してみんな草を食べているのにと怒っていた。
現在ウクライナは、国の存亡をかけてロシアと戦っている。ミサイル攻撃にさらされているウクライナ人も、戦争なんかないみたいに暮らしているロシア人に対して同じ気持ちだろうな。
第3話は2人1組で働く狙撃兵の話。ウクライナの村で焼け焦げた味方の死体を見てからは、ドイツ兵をいくら殺しても哀れみの気持ちは起きなかったそうだ。
第4話は、戦火をくぐって負傷者を救う話。第5話から第7話は、女が兵士であることの不都合を描いている。
原作は、従軍した元女性将兵たちへのインタビュー集とのこと。読んでみたいと思った。
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posted by ももた at 09:01| 東京 🌁| Comment(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。