2024年04月11日

歌われなかった海賊へ

逢坂冬馬 著
装画 雪下まゆ

<あらすじ>
1944年、ナチス体制下のドイツの村。
父を処刑された無職の少年ヴェルナーは、体制に反抗するエーデルヴァイス海賊団の少年レオンハルトと少女エルフリーデに出会い、仲間になる。
その後、ドクトルと呼ばれている爆弾好きの少年が仲間になり、エーデルヴァイスの花を徽章とする海賊団は4人組となった。
彼らはヴェルナーの家をアジトに、町やその先の市街地まで出かけてヒトラー・ユーゲントに戦いを挑み、逃げる道でその辺の家に反戦ビラを投函して回った。
1945年、村に鉄道がやって来ることになった。その工事に従事したヴェルナーらは、敷設されたレールに不審を抱く。
徒歩旅行で線路を辿って行き、強制収容所を見つける。囚人たちは劣悪な環境の中で、ナチスが奇跡の報復兵器と呼んでいるV2ロケットの、部品組み立て作業をしていた。
そこでエーデルヴァイス海賊団は、レール、トンネル、鉄橋を破壊すべく、かなり危うい爆破作戦を決行するが・・・

<感想>
前作『同志少女よ、敵を撃て』が面白かったし、評判も良かったので読んでみた。
本書は史実をベースにしたフィクションとのこと。ナチズム下の反抗少年少女グループ・エーデルヴァイス海賊団と、反逆者で死刑囚の息子ヴェルナーの成長を描く、面白い青春小説だと思う。
しかし、敗戦間近の公開処刑シーンに心が塞ぐ。読後感はあまり良くないな。
満足度 3.gif


posted by ももた at 08:42| 東京 ☀| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月08日

甘くない湖水

カンピエッロ賞受賞
ジュリア・カミニート 著
越前貴美子 訳 「L’ACQUA DEL LAGO NON E MAI DOLCE」
装画 森泉岳士

<あらすじ>
貧困家庭のコロンボ一家は、ローマ郊外のヘロイン中毒者と死にかけた老人ばかりいる地区の、半地下の穴倉のような家に住んでいた。
父親は工事現場で不正労働しているとき、足場から落下して下半身不随の障害者となった。波乱万丈な人生を送ってきた母親のアントニアは、劣悪な住環境を改善すべく努力していた。ガイアと父親の違う4歳差の兄・マリアーノ、双子の弟たちは、「欲しいものを手に入れるには、主張し続けなければならない」が口癖のアントニアの下、厳格に育てられた。
マリアーノが15歳のとき、一家は湖畔の集落にある公営住宅に引っ越した。アントニアは家族を養うために掃除婦として働き、娘をローマの学校へ通わせた。
しかし、ガイアはいじめの対象になった。クラスメイトを妬み、贅沢が許されない貧困の苦しみも鬱積して行き、暴力沙汰を起してしまう。
そして、母の命令に背いてデモに参加した17歳の兄が、祖母の家へ追いやられた。
思春期になると、ガイアは意固地な母親に息苦しさを覚え、次第に攻撃的になって行く・・・

<感想>
頑固で厳格な母親が支配する賑やかな貧困家庭と、そこで生まれ育った赤毛の少女の成長を描いており、プロットと少女の心理描写が秀逸だ。誰も信じられなくて居た堪れない少女の孤独が胸に突き刺さる。
中学を出てすぐ働き出したアントニアは、17歳のときマリアーノを産んだ。相手の男は殺人罪で刑務所に入っている。自分と同じ過ちを娘にはさせたくない、勉学こそが貧困から逃れる道と信じている。
貧困家庭のありふれた話だが、人に自分をさらけ出せない少女の常軌を逸した行動、女友達の裏切りに自殺と病死、色恋沙汰の報復と殺人未遂など、ほろ苦くも面白い青春小説だと思う。
満足度 3.gif


posted by ももた at 08:51| 東京 🌁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月22日

1(ONE)

〈駒子〉シリーズ C
加納朋子 著
装画 十日町たけひろ(旧名 菊池健)

<あらすじ>
瀬尾家には両親と玲奈と少し離れた所に住んでいる兄、そしてかつては〈ワン〉と言う名前の黒い大型犬がいた。
人とのコミュニケーションが下手な玲奈は、大学の入学祝いとして「私だけのわんこ」を飼わせてもらえることになった。
カフェオレ色の雑種の仔犬を〈ゼロ〉と名付けて溺愛し、憂鬱な日常が一変する。
ゼロを主人公にした短編を小説投稿サイトにアップしたところ、読者から感想コメントが届き、DMでやり取りするようになる。
夏休みに入ってすぐ、玲奈はパン屋でアルバイトを始めた。
そんな折、玲奈の周辺に不審な男が現れるようになる・・・

<感想>
投稿小説の読者第1号の正体、ストーカー騒動、別荘地で次々と犬を捨てる犯人捜しなど、ミステリ色はあるものの、あまり強くない。〈駒子〉シリーズのストレートな続編とも言い難い。
しかしシリーズの雰囲気はそのままで、隣人の飼い犬救出作戦、〈ワン〉が家族になった経緯などを描き、楽しく読ませる。読後感のとても良い長編小説だと思う。
満足度 4.gif


<〈駒子〉シリーズ作品リスト>
@『ななつのこ』A『魔法飛行』B『スペース』C『1(ONE)』

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posted by ももた at 08:38| 東京 ☔| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。