<あらすじ>
1948年新潟市生まれの原英太は、今年75歳の後期高齢者になった。妻の礼子と横浜で年金暮らしだが、40歳の時に無理して買った家があり、年老いた母が同居しても退職金と預貯金で最低限の生活は維持できている。礼子は71歳の今年から終活を始めているが、英太は「生きているうちに死の準備はしない」という主義で、ずっと終活を避けていた。
そんな中、母が93歳の誕生日を目前にして、熱中症で死亡した。葬儀や法要と納骨を済ませた後、同年代の友人と話した英太は、体が動くうちにやり残したことをやると決め、自分の人生にケリをつけるための終活を公言する。
ところが周囲を巻き込み、思わぬ事態に発展していく・・・
<感想>
老人になっても違う男女の精神構造、「他人軸」と「自分軸」、誰かと暮らしたいと安心安全を求めた時から老人になる、老人こそ健康とお金が大事、姑の処世術、煩わしい俗世間が高齢者を元気にする等々、改めて気づかされた。
息子夫婦と同居しても、置き膳とルームサービス、シビアな会計処理、息を潜めて暮らすのは少し寂しいかな。
純愛の女と再会する男、70代を黄金期にした男、高級老人ホームに入居して社会貢献する老夫婦、男が妻子の元へ帰り捨てられた不倫女、妻の損得勘定と40年後の仕返しなど、団塊の世代のケリとカタとトドメの終活を描く、面白い終活小説だと思う。