<あらすじ>
若くして夫を亡くし、必死で幼い娘・羽菜子を育ててきた彩和は、生きて行くための必要性に迫られ、古美術店の2代目店主で18歳年上の高階俊輔との結婚を決めた。全て娘の将来のためだった。
1989年5月、ともに再婚者同士の彩和と俊輔の結婚を祝う内輪の夕食会が、港区芝公園近くにある高級フレンチレストランで開かれた。その宴には俊輔の前妻・杏奈と18歳の息子、8歳の羽菜子も同席していた。
羽菜子は、俊輔の秘書兼運転手を務める27歳の野々宮歩を、年の離れた兄のように慕い懐いていた。
結婚生活が落ち着くに従って、俊輔は自己愛の強い芸術家であることが分かって来る。彩和は得体の知れない不吉な不安を覚え、夫を密かに恐れるようになった。そして俊輔が、彩和と野々宮の親密さに疑問を抱くようになる。不穏な状態が続き、どんどん雲行きがおかしくなる。
そんな中、思いもよらない出来事が突然降りかかって来る・・・
<感想>
娘を中心とした平和で穏やかな日々以外のものを求めていなかった女性の深層心理を丁寧に描いており、シングルマザーの打算、セレブな仮面夫婦の交友関係、猜疑心から膨らむ妄想や不当な誤解、崩壊して行く家庭などが相まって、面白く読ませる。
そして終盤は怒涛の展開だ。俊輔が深酒する理由と衝撃的な事実が明らかになり、巧妙なプロットと伏線に感服した。野々宮の辛さが胸に突き刺さるだろう。何とも切なく感動的な長編小説だと思う。






