2026年01月13日

ウロボロスの環

小池真理子 著

<あらすじ>
若くして夫を亡くし、必死で幼い娘・羽菜子を育ててきた彩和は、生きて行くための必要性に迫られ、古美術店の2代目店主で18歳年上の高階俊輔との結婚を決めた。全て娘の将来のためだった。
1989年5月、ともに再婚者同士の彩和と俊輔の結婚を祝う内輪の夕食会が、港区芝公園近くにある高級フレンチレストランで開かれた。その宴には俊輔の前妻・杏奈と18歳の息子、8歳の羽菜子も同席していた。
羽菜子は、俊輔の秘書兼運転手を務める27歳の野々宮歩を、年の離れた兄のように慕い懐いていた。
結婚生活が落ち着くに従って、俊輔は自己愛の強い芸術家であることが分かって来る。彩和は得体の知れない不吉な不安を覚え、夫を密かに恐れるようになった。そして俊輔が、彩和と野々宮の親密さに疑問を抱くようになる。不穏な状態が続き、どんどん雲行きがおかしくなる。
そんな中、思いもよらない出来事が突然降りかかって来る・・・

<感想>
娘を中心とした平和で穏やかな日々以外のものを求めていなかった女性の深層心理を丁寧に描いており、シングルマザーの打算、セレブな仮面夫婦の交友関係、猜疑心から膨らむ妄想や不当な誤解、崩壊して行く家庭などが相まって、面白く読ませる。
そして終盤は怒涛の展開だ。俊輔が深酒する理由と衝撃的な事実が明らかになり、巧妙なプロットと伏線に感服した。野々宮の辛さが胸に突き刺さるだろう。何とも切なく感動的な長編小説だと思う。
満足度 5.gif


posted by ももた at 09:16| 東京 ☀| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年11月18日

ひきこもり家族

染井為人 著
装画 たけもとあかる

<あらすじ>
12歳でひきこもりとなった19歳の平本僚太は、部屋から無理やり連れ出され、リヴァイブ自立支援センターが営む熊本の研修施設に運ばれた。
そこはプロレスラーのような巨体の女・辺見未知留という施設長の下、50代の竹之内忠、40代の谷亜弥子、20代の道辺玲、44歳の下田大知が共同生活していた。
大知はブラック企業で働き心を病んで、20年前から自宅にひきこもるようになった。息子の社会復帰を切望する年金暮らしの老母が、1年契約で800万円支払って研修施設に送り出したのだ。
僚太は囚人のような生活に耐えられず脱走するが、地域住民に見つかり、交番に運ばれ、施設に連れ戻された。
リヴァイブはブラック支援だった。厳罰や折檻、虐待に耐えられなくなった僚太たちは、施設長を殺してしまう・・・

<感想>
弱者とその家族を食い物にする悪徳業者、ひきこもりを抱える家族、人殺しを境に生まれ変わった男女5人などを描き、面白く読ませる。
しかし、想像していたものと違った。殺人事件は起きるが、ミステリではないな。それに読後感もあまり良くないな。何か劇的なことが起きないと、ひきこもり人生を変えることができないのは悲しいな。
満足度 2.gif


posted by ももた at 08:49| 東京 ☀| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月23日

青の純度

篠田節子 著
装画 チカツタケオ

<あらすじ>
50歳を迎えた今まで、狭く危ういキャットウォークを全力で走り抜けてきた美術系編集者・有沢真由子は、20年ほど前に投資対象として熱海の豪華リゾートホテルの区分所有権を買った。
その老朽化したホテルでひっそりと誕生日を祝っていたところ、かつて鼻先で笑って黙殺した画家ヴァレーズの、バブルの遺産のような作品と出会う。そして不覚にも感動し、安らぎを覚えた。価格は値崩れを起こして意外に安く、払えない金額ではなかったが、真由子のプライドが許さなかった。
しかし、ミレニアム直前に生まれた若い社員たちは違った。そこでウェブマガジンのアート&カルチャーページに作品の写真を掲載することにした。
そんな中、最近開業した外資系ホテルで、ヴァレーズの原画展が行われた。真由子は好奇心から原画展を訪れるが、それらはどう見ても原画ではない。真由子の心を捉えた海岸の風景画ではなかった。
その後、ウェブマガジンの広告主であるエステシャンの経営者が医療法違反で逮捕された。ウェブマガジンは廃刊となり、カリスマ編集長の真由子はコーディネーター的な役割を任される。
しかし真由子は、制作に関わりたかった。そこでヴァレーズを取り上げた本を作ると決め、取材に乗り出す。有給休暇を使ってヴァレーズが住むハワイへ飛び調査すると、彼の妻は日本人だった。そして8年前、ヴァレーズはナイトダイビング中の事故で行方不明になっていた・・・

<感想>
ヴァレーズの謎を追うミステリ仕立てになっており、バブルとその後遺症、ガラスの天井を破ることができた女たち、ハワイの日系人、アートビジネスと悪徳商法、商魂とイメージ戦略とブームの仕掛人などを描く、面白い長編小説だと思う。
ハワイ移民の日本人たちが和服をシャツに仕立て直したものがアロハシャツの原型で、それがハワイの文化となったそうだ。嬉しいな。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:27| 東京 ☁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。