2025年01月04日

サリー・ダイヤモンドの数奇な人生

リズ・ニュージエント 著
能田優 訳 「STRANGE SALLY DIAMOND」

<あらすじ>
2017年11月、アイルランドの辺鄙な田舎町クリックシーディ。
もう直ぐ43歳になるサリー・ダイヤモンドは、社会生活に上手く適応することができず、町民たちから変わり者と言われている。6歳のとき、精神科医トーマス・ダイヤモンドとその妻である内科医ジーンの養子になったが、それ以前のことは覚えていない。サリーという名前も養父母が付けてくれた。町外れの一軒家で養父と共に引きこもり生活を送っている。
そんなある日、82歳の養父が病死した。サリーは、父の言いつけどおりに家庭用焼却炉で遺体を焼いた。そして、死後開封と書かれたサリー宛の分厚い封筒を見つけるが、読まなかった。
父が死んで5日後、サリーは長期疾病給付金を受け取りに郵便局へ行った。父の年金を返してその理由を答えたところ、厄介な状況に陥ってしまった。
葬儀後、サリーのもとに差出人不明の古くて小さなテディベアが届いた。サリーはなぜかそのテディベアに見覚えがあり、名前がトビーだと知っていた。そして父が遺した手紙を読み、自分の出生の秘密を知った・・・

<感想>
誘拐監禁事件の被害者の息子と娘の数奇な半生を描く、面白いミステリだと思う。
サリー・ダイヤモンドの変人ぶりが楽しい。彼女を支える人たちも善人ばかりなので好ましい。社交性を身に着けるためのサリーの学習と努力、小児性愛者とその息子の逃亡生活など、面白く読ませる。そして読み進むに連れ、生母の悲劇と凄惨な誘拐監禁事件の全貌が明らかになっていく。
しかし、真相が明らかになるだけで、社会的な責任を取る者がいない。逃げ勝ちは許せないな。
子供の生育環境と親の責務、洗脳とトラウマ、人種差別と女性蔑視、孤独感と歪んだ愛情、被害者が加害者になる悪の連鎖など、考えさせられたな。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:38| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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