2024年12月11日

原爆裁判

アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子
山我浩 著

<内容>
「本書によせて 前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)」
「第1章 死の商人と呼ばれた男」
「第2章 原爆が投下された日」
「第3章 放射線との戦い」
「第4章 アメリカはお友達?だが・・・」
「第5章 女性弁護士三淵嘉子の誕生」
「第6章 家庭裁判所の母」
「第7章 原爆裁判」
「第8章 三淵嘉子の終わりなき戦い」
「「原爆裁判」判決文」 「終わりに」

「日本最初の女性裁判所所長」で「家庭裁判所の育ての親」と呼ばれる三淵嘉子(1914(大正3)年11月13日〜1984(昭和59)年5月28日)が、裁判官として「アメリカの原爆投下は国際法違反である」と判決を下した経緯を深掘りし、「原爆投下は国際的な戦争犯罪」とする判決文の全文も掲載したもの。

<感想>
死の商人と呼ばれた男とは、当時ベルギー領だったコンゴの鉱山から採掘した高純度のウランを大量にアメリカへ売ったエドガー・サンジェのこと。この男の存在がなかったら、アメリカの原子爆弾開発は不可能だったと言われているそうだ。知らなかったな。
「第2章」は、原子爆弾投下までの経緯とその是非について書いており、日本は広島への原爆投下後にその惨状を短波放送で世界に伝えていたそうだ。トルーマン大統領とバーンズ国務長官が無警告で大都市への原爆投下を強行した理由や、米国内でも否定的な見解があったことは興味深いと思う。
そして原子爆弾の爆発による被害、マンハッタン計画の総責任者レスリー・グローブの居直りと米国の世論操作、厳しい検閲をかいくぐって被爆の惨状を世界に知らしめたジョン・ハーシー記者のルポルタージュ「ヒロシマ」、アメリカの核戦略と第5福竜丸事件等々、勉強になった。
「原爆裁判」は、原子爆弾投下の違法性が初めて法廷で争われた国家賠償請求訴訟の通称名とのこと。1955(昭和30)年、日本が主権を回復した翌年に、広島と長崎の被爆者5人が大阪地方裁判所と東京地方裁判所で訴えを起こしたが、8年に及ぶ審理の後棄却された。被告は日本政府。被告の答弁(国側の主張)に、「原子爆弾投下は、必ずしも国際法違反であるとは断定し難い」とあり、悲しくなった。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:33| 東京 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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