国広喜美代 訳 「THE MARSH QUEEN」
<あらすじ>
スミソニアン自然史博物館勤務の36歳の鳥類画家ロニ・メイのもとに、12歳も年下の弟フィルから電話があり、転んで手首を骨折した62歳の母ルースに認知症の症状が出てきたので、長期休暇を取って故郷フロリダに帰ってきて欲しいと頼まれた。
8週間の育児介護休暇を取ったロニは、介護施設にいる母を訪ね、「ボイドの死についてあなたに話しておかなくてはいけないことがあります」と書かれた手紙を見つける。
ボイドというのは、ロニが12歳のとき沼地で溺死した父のことで、彼は漁業局の野生動物保護管理官だった。上司のフランク・シャペル局長の取り計らいによりボートの事故死とされたが、町の噂では自ら死を選んだとも言われていた。ロニは手紙の差出人ヘンリエッタを探す。
そうした中、母が年金を全部騙し取られていたと判る。そして、実家の隣人で漁業局の通信指令係だったマーヴィンとその妻ジョリーンが、行方不明になっていた。更に調べていくと、父が溺死した後、漁業局副局長ダン・ワトソンが至近距離からショットガンで顔を吹き飛ばされていた。
ロニとフィルの妻タミーは協力して、父の死の真相を追うが・・・
<感想>
スミソニアンで働く人々のエピソード、カヌーで湿地巡り、ロニ母娘のぎくしゃくした関係、ロニと女友達の友情、ロニのロマンスなどを描き、面白く読ませる。それに脅迫とストーキング、ワニ騒動や不気味な鳩の事件が相まって、サスペンスフルだ。
また、親がひとりで暮らせなくなったとき、家族が直面する親の財産管理と介護や経済的な問題も興味深い。
そして適切な伏線が散りばめられているので、ミステリ好きは容易に真相に辿り着けるだろう。家族小説の色合いが濃い長編ミステリだと思う。

人気ブログランキング
【関連する記事】