2022年01月26日

雷神

道尾秀介 著

<あらすじ>
家業の和食料理店「一炊」の見習い料理人・藤原幸人は、教師の妻・悦子と4歳の娘・夕見と埼玉のマンションで幸せに暮らしていた。
ある日、自宅ベランダからアザミの植木鉢が落下して、軽自動車のフロントガラスを直撃した。取り乱した年配の女性ドライバーがアクセルペダルを踏み込んでしまい、猛スピードで悦子の身体を背後から跳ね飛ばした。夕見が父親を喜ばせようと、植木鉢を陽の当たる場所へ移動したのだ。
現場を目撃していた幸人は、姉・亜沙実に娘を預け、病院に駆け付けつけるが、妻はもう冷たくなっていた。幸人は娘の暮らしを守るため、事故の真相を一生話さないと心に誓う。
妻の事故死後、幸人は娘を連れて3駅離れた実家へ戻り、父・南人を師匠にして料理の修業を続けた。
15年後、父が病死し、夕見は大学の写真学科に通いながら店の接客を手伝うようになった。
そんなある日、事故の原因と真相を知っているという男から脅迫の電話が掛かってきた。そして夕見が、懊悩する幸人に尊敬している写真家の写真を見せ、同じ場所で写真を撮って大学の期末写真として提出したいと言い出す。
その場所、新潟県羽田上村は雷が多い村で、幸人と亜沙実の生まれ故郷だった。31年前に母が不審死を遂げ、その翌年、雷が亜沙実を直撃して肌に電紋を刻み右耳の聴力を奪った。同じ日に毒キノコ中毒死事件が起き、父を殺人犯扱いした場所だった。藤原一家は村から逃げ、誰ひとり知る者のいない埼玉に移住したのだ。
この出来事を夕見に話したところ、写真を撮りに行くついでに、事件の真相解明をしようと言い出す。そこで幸人は脅迫者から娘を遠ざけるため、亜沙実と夕見を連れて30年ぶりに故郷へ行くが・・・

<感想>
人間の心の弱さや危うさ、親の愛が身に沁みる。そして思い込みや勘違い、行き違いなどで人生を狂わせたり、思い遣りや避けようのない出来事によって悲劇が生まれ、切なくも奥の深い話になっている。真犯人に同情を覚えた。
昭和の終わりから平成の出来事を絡め、その時代の風潮と地方色、家族愛や深い友情、父性愛などを描いた、感動的な長編小説だと思う。
そして、ありきたりな復讐劇なのだが、精緻なプロット、巧妙な伏線とトリックの妙味でそれを感じさせない技量に脱帽する。読み応えのある凄く面白いミステリだと思う。
さて本書には、有名な写真家の息子で、地方の郷土史や未解決事件を研究しながら全国を巡る写真家・八津川彩根が、重要な役どころで登場する。シリーズ物の探偵みたいだと思った。あれば良いのにな。
満足度 5.gif


ラベル:道尾秀介 星5
posted by ももた at 08:41| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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