<内容>
「第1章 攻撃命令/7月16日、米国は原爆実験に成功した。それが序曲だった。スターリンはワシレフスキーに言った。「前進し給え」と」
「第2章 8月9日/深夜午前1時、ソ連軍侵攻の火蓋は切られた。大本営陸軍部参謀次長川辺虎四郎中将は自らの手帖にこう認める。「予の判断は外れたり」」
「第3章 宿敵と条約と/満州は日本にとって、そしてソ連にとって、どのようなものであったか?宿敵の日ソは中立条約を結ぶが、両者の思惑には天と地の隔たりが…。」
「第4章 独裁者の野望/スターリンは昭和17年に対日参戦を決意していた!戦後処理を図る列強の権謀が渦巻く中、この男の密かな野望が徐々に浮かび上ってくる。」
「第5章 天皇放送まで/「五族協和」の理念は音をたてて崩れ去った。関東軍は戦う前から撃破を放棄し、上層部は妻子を連れ退避する汽車に乗り込む。こうして100万同胞の悲劇が始まった。」
「第6章 降伏と停戦協定/「天皇の軍隊」は国民を守らなかった。降伏の仕方さえ知らなかった!そして、国際法を無視したソ連軍によって、50万人がシベリアへ…。」
「第7章 一将功成りて/スターリンは日露戦争の復讐戦に大勝利した。その陰で、18万余の日本人が満州、シベリアの地で果てた。「正義の戦争」など、未来永劫、ありえようもない。」
「大本営陸軍部職員表/関東軍指揮系統略図/第一極東方面軍侵攻概要図/対ソ作戦計画参考図/ソ連軍侵攻概要図および関係地名図/主要参考文献/あとがき」
<感想>
文章の歯切れとテンポが良く、太平洋戦争の知識がなくてもすらすら読め、分かり易い。補注が充実しており、昭和の陸軍激動史や歴史小説を読むような面白さがある。
ロシア革命以降の日本とソ連の関係、日ソ中立条約侵犯(条約の不延長通告はあったが、まだあと1年間は有効。ソ連の対日宣戦布告は、国際法に違反する。日本はソ連に宣戦布告をしなかった。)、ポツダム宣言受諾前後の動き、米英両国で作成した領土不拡大の原則「大西洋憲章」、ヤルタ秘密協定と国際法上の大原則、北方領土問題とシベリア抑留、ソ連の残虐な行為と開拓団の悲劇等々、勉強になった。一読の価値がある本だと思う。

人気ブログランキング
【関連する記事】