2021年04月26日

罪の声

第7回山田風太郎賞受賞作
塩田武士 著
装画 中村弥

<あらすじ>
京都でテーラーを営む曽根俊也は、自宅兼店舗で黒革のノートと古いカセットテープを見つけた。
テープを再生すると幼い頃の自分の声が入っていて、その文言は31年前に菓子メーカー社長誘拐、複数の製菓・食品メーカーを恐喝した大事件の犯人が使った録音テープの内容と一致していた。
ノートには、青酸ソーダ入りの菓子をばら撒き日本中を震撼させたこの未解決事件が発生する4カ月前に、オランダで起きたハイネケン経営者誘拐事件の顛末と、日本企業の株とか記者クラブ、警察機構について、イギリス英語で書かれていた。
寡黙で仕立屋一筋だった亡父の関与は考えられないが、これまで会ったことのない伯父・曽根達雄はイギリスで消息を絶っていた。
曽根俊也は幼い娘を誹謗中傷の渦から守るため、父の幼馴染みで高級家具店店主・堀田信二と共に調査に乗り出す。
一方大手新聞の大阪本社では、関西を中心に起きたこの有名な未解決事件を、年末の特別企画として特集することにした。
文化部記者・阿久津英士も応援に駆り出され、取材班に組み込まれた。関係者の足跡を辿るうち、記者生活にさざ波が立ち始め、未解決事件の深みに嵌まって行く・・・

<感想>
2000年に時効を迎え完全犯罪となった「グリコ・森永事件」をモデルにしており、そそられると同時に良く調べられていると思った。
家族の問題を抱える善良な庶民と新聞記者の取材活動を交互に描き、真犯人の影に迫って行く。文章が固くなくて読み易く、ストーリー展開も巧い。
そして、新聞社の人間模様に笑えるエピソードもあり、犯人像の考察、警察の迷走、暴力団員と利権屋、株価操作と仕手戦など、時代を感じて感慨深く読み応えもある。とても面白いミステリだと思う。
しかし、大人に利用された子供が憐れで胸が痛くなる。謎が全て解明されたとは言い難い。すっきりしない結末だったな。
満足度 4.gif



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posted by ももた at 10:27| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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