樋口明雄 著
カバーイラスト つがおか一孝
解説 西上心太
<内容>
南アルプスを舞台に、山岳救助隊と救助犬のレスキュー活動を描く、8つの短編集。
「第1話 孤老の山」 「第2話 愛子とアイコ」
「第3話 銀嶺の彼方に」 「第4話 影なき男」
「第5話 愛と名誉のためでなく」 「第6話 COLDWAR」
「第7話 南アルプスの山賊」 「第8話 両俣綺譚」
<感想>
本作は『紅い垂壁』の前日譚とのこと。
「孤老の山」は、同居する息子夫婦から邪険にされて拠り所のない83歳の老人の捜索。
「愛子とアイコ」は、昨今何かと問題視されている犬連れ登山者の愛憎劇。
「銀嶺の彼方に」は、雪崩事故の遺体捜索。
「影なき男」は、過去の遭難事故が起因の復讐劇。
「愛と名誉のためでなく」は、世界的なクライマー親子の話。
「COLDWAR」では、米軍の輸送機編隊の無謀な飛行によって雪崩が起きる。雪崩の迫力と戦争の話が相まって読み応えがあった。
「南アルプスの山賊」は、死に場所を探して避難小屋に辿り着いた、陸上自衛隊の元レンジャー隊員の悪事とその逮捕劇。
「両俣綺譚」は、サラ金強盗の共犯を逮捕すべく両俣小屋にやって来た見当たり刑事の話。
短編ごとに主人公が違うので内容に変化があり、最終話まで一気に楽しめると思う。