カバーイラスト 長新太
<内容>
第二次世界大戦下の昭和19年8月22日夜、沖縄県の疎開学童を乗せた徴用船対馬丸が、鹿児島県南方の悪石島付近でアメリカ海軍潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没した。子供たちの大部分789名が一挙に海に呑まれ、戦争の犠牲となった。生存者157名(学童は59名)は幾日か漂流して救われた。
本書はその実録を通じて、学童疎開船対馬丸の悲劇を描くノンフィクション。
<感想>
学童疎開は国策で空襲から子供たちを守るための措置だが、沖縄から鹿児島へかけて敵の潜水艦がうようよしていて、貨物船が沈められたことは公然の秘密になっており、大部分の大人は海上が危険だと認識していた。
当時の戦況や防衛のために陸海軍の兵隊を増強した沖縄の食糧事情など、戦局の緊迫感がひしひしと伝わってくる。
そして「遭難の模様」「死と戦う漂流」「生還者たちの証言」「事件の概要と弔いの記録」など、読み応えがあった。子供たちが不憫でならない。