2024年11月29日

難民・移民のわたしたち これからの「共生」ガイド

(14歳の世渡り術)
雨宮処凛 著

<内容>
「はじめに」 「第1章 どうして難民・移民の人たちは日本にいるの?」
「第2章 難民・移民の人たちはどんな生活をしているの?」
「第3章 難民・移民の子どもたちは何に困っているの?」
「第4章 日本の難民・移民政策って? 入管ってどんなところ?」
「第5章 難民・移民の人たちに、私たちができることは? 「難民・移民フェス」の仕掛人・金井真紀さんに聞く」
「おわりに」 「難民・移民の人たちについてもっと知りたい」

<感想>
難民とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受ける恐れがあるため他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」で、移民には法的な定義はないが、「国籍国を離れて、一定期間、別の国に住む人」とのこと。日本の難民申請者は1万人を超えたが、難民認定率は低い。
本書では、祖国ミャンマーで民主化活動をしてきたイスラム系少数民族ロヒンギャの男性、来日15年目にして在留資格を失い難民申請をしたチリ人男性、在留資格を失い2度目の難民申請中に出産した来日10年の女性など、難民申請を却下された仮放免者を取り上げ、その窮状を訴えている。公的支援は原則1回目の難民申請の人に限られ、難民申請が却下されると打ち切られるそうだ。
なぜ彼らは就労もできない仮放免者のまま何年も日本にいて、子供を産み育て、難民申請を繰り返すのだろう。なぜ入管は彼らを仮放免者のままにしておくのだろう。本書を読んでもその答えは見つからない。
外国人は強制送還を逃れるために難民申請を悪用し、仮放免者は在留特別許可を得るために子供を産み育て、在留資格更新10年を経て永住権が欲しいのかな。
著者は日本を「難民に冷たい国」と言っている。非正規滞在外国人は難民認定率の低い日本に見切りをつけ、難民認定の緩い国へ行った方が幸せだと思う。
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posted by ももた at 08:37| 東京 ☀| Comment(1) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月27日

紅い垂壁

南アルプス山岳救助隊K−9・シリーズ L
樋口明雄 著
カバーイラスト つがおか一孝

<あらすじ>
魔の山と呼ばれる谷川岳でも屈指の難関ルート、一ノ倉沢の衝立岩中央陵で2人の登山者が登攀中に滑落し、田村柾行が墜死した。救助された川越伸彦は、バディの田村が自分でザイルを切ったと証言し、山岳事故として処理された。
その後、伸彦のもとに、望遠ズームで撮影した脅迫写真5枚が送られてきた。写真の裏には、銀行口座と振込金額と支払期限が記されていた。
一方、南アルプス山岳救助隊では、新人研修が行なわれていた。南アルプス署交通課の警察官でもある新人候補生・桐原健也は、体力と持久力もあって楽々と訓練をこなすが、独断専行が過ぎて協調性に欠け、人格的に問題があった。江草隊長の鶴の一声で桐原の入隊が決まると、隊員たちは彼の言動に戸惑う。
そして、柾行のたったひとりの肉親である妹・透子は、伸彦の言動に不審を抱いていた・・・

<感想>
主人公は、山岳救助犬メイのハンドラーで救助隊員の星野夏実。山岳救助隊の活動を描いており、山岳事故と計画的な殺人、妹の復讐劇、独りでテントに置き去りにされた8歳の少年のエピソードなどが相まって、とても面白い山岳小説だと思う。
そして最後には新人隊員・桐原健也が大活躍する。続編が楽しみだな。
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posted by ももた at 08:42| 東京 🌁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月21日

復活の歩み リンカーン弁護士

ミッキー・ハラー(リンカーン弁護士)シリーズ F
マイクル・コナリー 著
古沢嘉通 訳 「RESURRECTION WALK」

<あらすじ>
ひとりの男を人身保護請求で刑務所から救い出したリンカーン弁護士、ミッキー・ハラーが起ち上げた無実プロジェクトには、冤罪を訴えて彼の協力を懇願する受刑者からの依頼が殺到していた。
そこでハラーは、その選別を元ロス市警刑事の異母兄ハリー・ボッシュに委ね、初動審査も任せた。
ボッシュは、元夫である保安官補ロベルト・サンズを銃殺した罪で5年間服役中のシングルマザー、ルシンダの手紙に着目し、予備調査を行う。
するとルシンダの発射残滓検査結果は陽性だったが、殺害凶器は発見されなかった。そしてロベルト・サンズは、保安官補ギャングの一員を意味するタトゥーを尻に入れていた。ルシンダは元夫の殺害を否定したが、刑事弁護士フランク・シルヴァーの勧めで不抗争の答弁取引をしていた。
ハラーとボッシュは、ルシンダの無実の主張は検討に値すると考え、シルヴァーからサンズ事件のファイルを入手した。そして彼女の冤罪を晴らすべく、再審請求に向けて動き始めるが・・・

<感想>
73歳のハリー・ボッシュは、癌の最先端治療の治験を受けながら、主役級の大活躍を見せる。
科学捜査専門家アースレイニアン博士のデモンストレーションや、ミッキーの元妻マギーが絡む法廷劇に、ボッシュとハラーの復活の歩みが相まって、とても面白いミステリだと思う。
しかし、捻りもどんでん返しも無かったな。
次作『The Waiting』でもボッシュ父娘は活躍しており、レネイ・バラード刑事シリーズ第6作目とのこと。楽しみだな。
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posted by ももた at 08:33| 東京 🌁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。