装画 安藤巨樹
<あらすじ>
岩手県盛岡市にある「清嘉」は、72歳の親方・小原孝雄、その息子で38歳独身の職人・悟、間もなく還暦の職人・林健司と、研磨専門のアルバイトひとりで回している、南部鉄器工房だ。工房と同じ敷地に、南部鉄器を販売する店と小原家の住まいがある。母が病死して、妹の由美が嫁ぎ、悟と孝雄はふたりで暮らしている。
ある日、仕事一筋で頑固な父・孝雄が勝手に、家庭裁判所の補導委託制度(問題を起こして家庭裁判所に送られてきた少年を一定期間預かる制度)の委託先として登録申し出をした。決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に、悟は戸惑う。
1か月後、「清嘉」で預かる16歳の少年・庄司春斗とその両親が、小原家にやって来た。納得のいかない悟は、できる限り関わらないと決めていたが、春斗は想像していたような非行少年ではなかった。一緒に暮らしていくうち、少年に立ち直って欲しいと思うようになる・・・
<感想>
善人のうえ、問題を抱えている少年に理解のある人ばかり登場する。思いやりの心が溢れているから、読後感がとても良い。
そして、応援者と味方の違いに気づかされた。非行少年の更生をテーマにした、感動的な長編小説だと思う。