2024年07月30日

じんかん

第11回山田風太郎賞
今村翔吾 著
装画 山中智郎

<内容>
主家を乗っ取り、将軍を暗殺し、東大寺大仏殿を焼き払った悪名高き戦国武将・松永久秀の物語。

<感想>
織田信長を案内役にして、戦国武将・松永久秀の生き様を描いている。
「じんかん」とは、人と人が織りなす間、つまりはこの世、人との出会いが思いがけない道を開く。
戦で孤児になった兄弟とそんな子供たちを集めて野盗働きをする多聞丸少年、茶の湯と柳生の兵法と戦法の学び、松永久兵衛久秀と勘助長頼となった兄弟の成長、合戦と久秀の苦難、主家殺しと将軍殺しと東大寺大仏殿炎上の真相など、とても面白い歴史小説だと思う。
巧い作家だな。他の作品も読んでみたいと思った。
満足度 5.gif


posted by ももた at 08:34| 東京 ☀| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月26日

凶獣の村

捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎シリーズ B
櫛木理宇 著

<あらすじ>
日曜日の早朝、胎岳村で県警の元捜査員・三ツ輪勝也の他殺体が発見された。そして連れて出たはずの小学2年生の孫娘・楓花が消えた。
その翌日、死体の第一発見者である村民、長男こと辻天馬のポストに身代金要求の封書が届いた。
鍋島班の鳥越恭一郎は、水町美緒巡査を連れて、捜査本部の応援に駆けつける。
事件現場の胎岳村は、辻十雪と名乗る指導者に率いられた新興宗教、十雪会の本拠地だった。
そして25年前、7歳の少女誘拐殺人事件が起きた場所だった。当時、三ツ輪も捜査に関わっていたが、犯人を挙げられず、今も未解決のままだ。
2通目の封書は、同じく十雪会の残党である宝生虹介の家に届いた。
しかし誘拐犯は、身代金の受け渡し場所に現れなかった。捜査線上に、胎岳村生まれで三ツ輪と因縁の深い前科者・塙乙彦が浮上する。
ところが、塙は死体で見つかった。鳥越は、俗に言うマル暴の名物刑事だった長下部とコンビを組み、捜査に当たるが・・・

<感想>
過去と現在の事件、弱者の弱みに付け込む新興宗教の恐ろしさと人間の愚かさを描き、面白く読ませる。
そして、主人公のキャラにも増々磨きがかかっている。軽口がとても楽しかった。
また、猟犬タイプの鳥越が心を許すのは鴉だけだが、本作では変化の兆しを窺える。続編が楽しみなシリーズ物だと思う。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:41| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月24日

暁の報復

ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ P
C・J・ボックス 著
野口百合子 訳 「Vicious Circle」

<あらすじ>
猟区管理官ジョー・ピケットに強烈な恨みを抱いているダラス・ケイツが、刑期を終えて出所し、町に戻ってきた。
そして無職の怠け者のハンター、デイヴ・ファーカスが、ジョーの留守電に警告の伝言を残して、自分のエルク・キャンプから姿を消した。
ジョーは民間航空パトロールに同行して、ファーカスの捜索に当たる。セスナの燃料切れのため帰還直前、赤外線装置で殺人の瞬間を目撃する。
その翌日、ファーカスの銃殺体を発見した。ファーカス殺害の証拠が出揃って、ダラスは逮捕された。
そんなとき、ピケット家の次女エイプリルのルームメイトが、腕にタトゥーを入れた女に襲われた。
そして、ワイオミング州で最も悪名高い刑事弁護士マーカス・ハントがダラスの弁護を引き受け、義母のミッシーがミセス・ハントとして町に戻ってきた。
やがて、スパイヴァク保安官代理が証拠に細工したと判明し、ダラスの起訴は取り下げられた。
その頃、ジョーの盟友で鷹匠のネイト・ロマノウスキは、無法の世界から足を洗って真面目に働いていた。姿を消したバーテンダーの他殺体を発見する。
そんな中、ピケット家に危機が迫っていた・・・

<感想>
正義感の強いジョー・ピケットは、金銭尽くで心の捻じれた独善的な母親に育てられた若者に同情するが、最愛の家族を守るために復讐と非難の応酬を止めるべく反撃する。
古い馴染み同士が動かしている遅れた司法制度と法廷劇、クズ白人扱いされてきた田舎の無法者一家の復讐劇、ジョーの盟友ネイト・ロマノウスキの参戦などが相まって、とても面白い長編小説だと思う。
本国では24作目『Three-Inch Teeth』が出ているそうだ。そして日本では、18作目『The Disappeared』と19作目『Wolf Pack』が2025年に出版予定とのこと。楽しみでならない。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:38| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。