クリス・ウィタカー 著
峯村利哉 訳 「TALL OAKS」
カバーイラスト 亀谷哲也
<あらすじ>
全米でも犯罪発生率が最低の部類に入る小さな町トールオークス。殆どの町民は裕福な階層に属しており、守るべき家名を背負っている。
ある嵐の晩、地階にある子供部屋にひとりで寝かせていた3歳の息子ハリーが、忽然と消えた。
子供部屋には、最新型の赤ちゃんモニターが設置されていた。シングルマザーのジェスによれば、ハリーがいなくなる直前、そのモニターから彼女の名前を呼ぶ声が聞こえ、ピエロのマスクを被った男が息子の部屋にいたと言う。
鑑識班が子供部屋を捜索すると、ピエロのものと思われる緑色の毛が発見された。町民総出で子供を探したが、見つからなかった。拉致犯からの電話も無かった。警察は手掛かりすら掴めなかった。
ハリーが攫われてから3か月が経過し、町民の間で事件への関心が薄れ始める。
そうした中ジェスは、被害者の母親として警察署に足繫く通い、事件が忘れ去られないよう奮闘していた。そして警察署長ジム・ヤングも、手掛かりを求めて捜査を続けていた。
やがて、住民たちそれぞれが抱えている秘密が明らかになって行く・・・
<感想>
本筋である事件をそっちのけにして、ギャング気取りの男子高校生とその家族、写真館の男性店員とその母親、表面上は似合いであるジェスの叔母夫婦など、トールオークスの町民をユーモアとウイットの利いた筆致で描き、楽しく読ませる。しかもそこには事件解決の伏線が散りばめられていた。
次第に明らかになる住民たちの秘密、ジェスとジムの関係、フォードの販売員ジャレッドを巡る騒動の顛末、恐ろしい真相などが相まって、凄く面白いミステリだと思う。それに毒のある母親の看護をしていた巨漢が、最後に報われてほっとした。
しかし、ジムの暴力行使は行き過ぎだと思う。看過できないな。