M・C・ビートン 著
羽田詩津子 訳 「There Goes the Bride」
カバーイラスト 浦本典子
<あらすじ>
探偵助手だった若いトニ・ギルモアが、自分の探偵事務所を開いてアガサから独立した。元部下で現在は大学生のハリー・ビームが、資金援助をしたのだ。
更に元夫のジェームズ・レイシーが、若く美しいフェリシティと結婚することになった。ジェームズの婚約パーティーで出会ったフランス人、シルヴァン・デュポアに電話すると、彼はアガサによそよそしかった。
そこでアガサは、戦場跡のガイド本を書こうとしているジェームズを見返してやろうと考え、クリミア戦争の戦場跡を訪れた。
ところが、行く先々でジェームズとフェリシティを見かける。アガサは家に戻り、仕事に復帰すると、ジェームズに対する執着心が消えた。
一方ジェームズは、この結婚に不安を覚えていた。結婚から逃げたいとアガサに打ち明けると、「花嫁を撃ち殺したら?」と言われた。
そしてアガサは、フェリシティからストーカーの疑いをかけられた。
結婚式当日、フェリシティがウェディングドレス姿のまま自宅で何者かに撃ち殺された。警察は嫉妬に駆られたアガサと、結婚が嫌になったジェームズの共謀を疑うが、馬鹿げた帽子のおかげでアガサの容疑は晴れた。
そんなアガサは、フェリシティの母親から犯人捜しを依頼される・・・
<感想>
50代前半のアガサは年齢のことで不安になっていて、若く美しくて優秀なトニに嫉妬している。極度の負けず嫌いのため、自分の優秀さを証明しようとして何度も死体に出くわし、死にかける。
そして、ジェームズは兄のような存在になってしまい、チャールズは好きな時にアガサの人生にやって来ては去って行くし、ロイはたまに訪ねて来るだけだ。愛を求めるアガサは、自分だけの男性が欲しくて高級結婚紹介所に登録して騙される。
また、寂しがり屋でもあるので、予定のない週末や孤独に耐えられない。甘い言葉や罠にやすやすと嵌ってしまい、友人たちに助けてもらう。
ヘマばかりして意気消沈し、自信を失って誰にも必要とされていないと勝手に思い込んだ挙句、引退宣言してしまう。
公私共に最後まで目が離せない展開になっており、とても面白いコージーミステリだと思う。次作『アガサ・レーズンと告げ口男の死』が楽しみだな。