務台夏子 訳 「Nothing More Dangerous」
<あらすじ>
1976年、米国ミズーリ州の小さな田舎町ジェサップ。
幼い頃に父を亡くした15歳の少年ボーディ・サンデンは、母と忠犬グローバーとで小さな平屋に住んでいた。通っているカトリックの高校に馴染めず、友達もいない。母の勤務先で倉庫掃除のアルバイトをしながら、寂しい日々を送っている。
そんなある日、35歳の黒人女性ライダ・ポーが失踪した。彼女は、町最大の雇用主であるプラスチック加工会社の購買部で働いていた。
2週間後、ボーディが慕っている隣人ホーク・ガードナーの家に、失踪事件を捜査しているヴォーン保安官が訪ねてきた。
ライダ・ポーはかつてホークの事務所で働いていた。離婚後、ホークを追うようにしてジェサップにやって来た。
ホークと保安官の話を盗み聞きしたボーディは、自分が隣人について殆ど何も知らないことに気づく。
そうした中、サンデン家の向かいの空き家に、黒人のエルギン一家が引っ越してきた。
一家の息子トーマスとボーディは同じ年だった。少年たちは夏休みに森へキャンプに行き、白人至上主義グループのアジトとライダ・ポーの遺体を発見する・・・
<感想>
本書は、『償いの雪が降る』と『たとえ天が落ちようとも』に登場する元弁護士で、今はロースクールの教授ボーディの少年時代の物語とのこと。そして原題は、公民権運動に尽力したキング牧師の言葉からとられているそうだ。
偏見と人種差別と学校のヒエラルキー、失踪事件の謎とホークの過去、故郷脱出を夢見ている主人公の葛藤と成長、思春期の少年たちの友情、保守的な田舎町の人間関係などが相まって、感動的な青春小説だと思う。