2024年04月26日

赫き女王

北里紗月 著
装画 荻原美里

<あらすじ>
九州・パラオ海嶺の中央に位置する瑠璃島は、サンゴ礁に囲まれた楽園のように美しい無人島だ。島にあるのは海洋生物総合研究所だけで、海洋生物資源の有効利用を主目的にしている。所長に桐ケ谷杏上席研究員を置き、25名の生物学者が研究を行っている。オニヒトデに含まれるDNA分解酵素を研究している高井七海が、この研究所の準研究員となって9ケ月となる。
ある日、島の沖合で赤潮が発生し、桐ケ谷所長と研究員4名が屋上から転落死した。この状況を東京の本部と警察に通報したところ、3日後に船が到着するまでの間、研究員たちは業務を停止して待機することになった。
その直後、桐ケ谷所長が独りで秘密裏に新種の生物の研究を進めていたと判明する。彼女はこの生物をレッド・アルベオラーダ・クィーン、略称レッドと名付けていた。
七海は転落死した職員の行動異常がレッドの影響であると考え、鳥類の生態学者・三上桃子、沖野研副所長と共に調査に乗り出す。そして、異形の生物たちの攻撃的な採食行動に出くわす。レッド感染は島全体に広がっていた・・・

<感想>
評判が良いので読んでみた。非現実的な現象を描いており、確かに面白いと思う。
しかし中程まで読まないと、その本領は発揮しない。主に3人しか登場しない。展開も読めてしまう。どこが極限のバイオパニックホラーなのか、サバイバル活劇なのか、さっぱり分からなかったな。期待値が高過ぎたのかもしれない。
満足度 3.gif


posted by ももた at 08:42| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月23日

海渡る北斎

「波の伊八」と19世紀のインフルエンサー林忠正
神山典士 著
装画 蟹江杏

<内容>
「プロローグ この1000年で人類史に最も貢献した100人」
「第1章 波に命をかけた男〜波の伊八」
「第2章 波に魅せられた男・葛飾北斎」
「第3章 ゴッホもモネも熱狂した19世紀末ジャポニスム」
「第4章 北斎と日本美術をプロデュースした男・林忠正」
「エピローグ 150年を経た「北斎ブーム」」
「あとがき 前作から広がる北斎の世界」

<感想>
波の伊八と言われる彫物師・武志伊八郎信由58歳の作品とされている、行元寺(千葉県いすみ市)の欄間を飾る彫り物「波に宝珠」が、絵師・葛飾北斎によって浮世絵となり、海を渡って西洋人を驚かせ、世界の絵画史に大きな影響を与えた。
伊八の彫った波と北斎が描いた波を並べて見ると、その酷似性がひと目でわかる。
北斎が房総半島へやって来て伊八の作品を見たに違いないと語られる状況証拠、明治時代の美術商・林忠正の功績など、勉強になった。
とても興味深く面白い読み物だと思う。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:43| 東京 ☁| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月19日

可燃物

米澤穂信 著
装画 野中深雪

<内容>
群馬県警を舞台にした短編ミステリ集。
『崖の下』『ねむけ』『命の恩』『可燃物』『本物か』を収録したもの。

<感想>
余計なことは喋らない、上司から疎まれる、部下にも良い上司とは思われていない葛警部を主人公とした、面白い警察小説だと思う。
『崖の下』は、スノーボーダー遭難事件と刺殺事件。葛警部が凶器の不在に挑戦する。
『ねむけ』は、強盗致傷事件と信号交差点での出会い頭事故の捜査を並行して行う。
『命の恩』は、榛名山麓のばらばら遺体遺棄事件。意外な顛末だったな。
『可燃物』は、太田市のゴミ集積所を狙った連続放火事件。葛警部は、違和感を徹底的に調べていく。犯人像もその動機も意外性はあるが、皮肉な結末だったな。
『本物か』は、ファミリーレストランの立てこもり事件。どんでん返しがあり、葛警部の鮮やかな推理が光る作品だと思う。
短編だと物足りないことが多いが、本書は無駄なエピソードがない分、葛班の地道な捜査と葛警部の卓越した推理力を楽しめた。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:56| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。