サラ・パレツキー 著
山本やよい 訳 「OVERBOARD」
カバーイラスト サヌキナオヤ
<あらすじ>
コロナによるパンデミックに晒されていたシカゴ。
シナゴーグの壁が、何者かに傷つけられる事件が起きた。ヴィクは愛犬ミッチとペピーを連れて、夜間の見張りをした。
その後ミシガン湖畔まで車を走らせ、犬たちを運動させてやろうとしたところ、ミッチが逃げてしまった。ヴィクは走って追いかけ、岩場にあるコンクリートブロックの隙間に倒れていた少女を発見する。
少女は「ナギー?」と問いかけ、意識を失った。ヴィクは911に通報し、少女が救急車で搬送されるのを見届け、帰宅した。
シカゴ市警が押しかけてきて、少女から渡された物をよこせと迫るが、ヴィクには心当たりがなかった。
数日後、シナゴーグが襲撃された。そして少女が病院から姿を消した。ヴィクはシナゴーグ襲撃事件に関わりつつ、身元不明の少女を捜す。
そうした中、かつての隣人ドニ・リトヴァクの息子ブラッドがヴィクの事務所を訪れ、両親のことを相談する。その帰り、ブラッドが正体不明の男たちに襲われた。
そして病院の清掃人ヤン・カーダールと、少女と同室だったアリアドネが殺された。
体を張って悪人どもと対決するヴィクは、ホロコーストやハンガリー動乱を生き延びた老人たちとティーンエイジャーたちを助けるべく奔走する・・・
<感想>
コロナ禍を背景にヴィクとその愛犬たちの活躍を描いており、シカゴ政財界のフィクサーと土地開発の大規模プロジェクト、かつてサウス・サイドに住み家族が強い絆で結ばれている一族などが相まって、面白く読ませる。
また、ヴィクは一匹狼の女探偵だが、フリーマン・カーター弁護士、ジャーナリストのマリ・ライアスン、ティムとジムとトムのストリーター兄弟、整備士ルーク・エドワーズなど、心強い味方も登場し、懐かしいボビー・マロリー警部の消息にも言及している。シリーズのファンは嬉しいだろう。次作『Pay Dirt』が楽しみだな。