山崎美紀 訳 「These Silent Woods」
カバーイラスト 安藤巨樹
<あらすじ>
アフガニスタンの帰還兵ケニー・モリソンは、過去に犯した罪から逃れるようにクーパーと名乗り、アパラチア山脈の山奥の静かな森の片隅にあるキャビンで8年間、ひとり娘のフィンチと暮らしてきた。
年に一度だけ、毎年12月14日に、この土地の所有者で陸軍時代の相棒でもあるジェイクが、物資の補給に来る。川下に住む隣人スコットランドは、なぜかクーパーの正体も、娘と2人だけで森にいる理由も知っていた。
赤ん坊だったフィンチが知っている世界は家と森だけだが、年月を経てスコットランドを信頼するようになった。
ところが今年は、ジェイクが来なかった。クーパーはフィンチを連れて、南へ80q離れたウォルマートへ買い出しに行く。次の生存計画として森へ狩りに出て、写真を撮っている少女を見かけた。そのときクーパーは、パニック発作に襲われた。
その後、ジェイクの妹マリーがやって来て、彼の死を告げた。雪のせいでマリーが足止めされて6日目、保安官がやって来て、地元の17歳の少女が行方不明になっていると告げた。クーパーが懸命に守ってきた生活は少しずつ崩れていく・・・
<感想>
現在の出来事にクーパーの過去を織り交ぜ、ストーリーが進む。電気通信もない自給自足の生活、死んだら必ず地獄の業火に焼かれるほどの罪、隣人スコットランドの謎の行動など、そそられる展開だ。人里離れた自然の景観描写も素晴らしい。
そして終盤になると状況が一変し、全ての真実が判る。恩義と自己犠牲、社会正義などについて考えさせられた。
クーパーとマリーとスコットランドの悲しい人生の物語、フィンチの成長、少女失踪事件などが相まって、感動的な長編小説だと思う。