2024年03月12日

海は地下室に眠る

清水裕貴 著
装画 荻原美里

<あらすじ>
2017年秋、千葉市稲毛区にある古い洋館・伝兵衛邸の地下室から作者不明の大きな絵が発見された。
翌年の8月、千葉市美術館の学芸員・松本ひかりと植物彫刻家・椹木正勝は、管理人をしている老婦人・浜中あやめに案内されて、地下室の謎の絵を見学する。
その絵画は大正か昭和初期の、赤いドレスを着た上流階級の日本人女性を描いたものだった。ひかりは情動を揺さぶられ、絵画の来歴調査を買って出た。
ところがひかりは、現代美術のグループ展の準備で忙しくなる。
今年で73歳になる風景画家・沼田春子や椹木正勝、映像作家・黒砂和明らに出展依頼していくと、美容師だった祖母・玉子の若かりし頃の賑やかな日常生活が浮上する。
更に黒砂和明から預かった、千葉の花街として栄えた蓮池にまつわる地元新聞のインタビュー原稿を読むと、祖母は芸妓のぽん太や流転の王妃として知られる嵯峨浩と仲良くしていた。
そして、ひとりっ子だと思っていた父・海彦には、真砂という名の兄がいた。
やがて、75年間も隠してきた蓮池の人たちの秘密が明らかになって行く・・・

<感想>
戦時の過去とコロナ禍の現代を交互に描いている。作者不明の絵画の謎、故宮の御伽噺と赤いドレスで踊る女の怪談、血塗れの着物と黒砂の祖父の過去、失踪事件と家族の秘密など、多くの謎を織り交ぜ、ストーリーが展開する。
清王朝のラストエンペラーと満州国皇帝の弟に嫁いだ日本人女性の話、太平洋戦争中の花街の生活、運命に翻弄された女たちの過去など、歴史ロマンを感じさせる凄く面白いミステリだと思う。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:42| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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