2024年03月08日

甘くない湖水

カンピエッロ賞受賞
ジュリア・カミニート 著
越前貴美子 訳 「L’ACQUA DEL LAGO NON E MAI DOLCE」
装画 森泉岳士

<あらすじ>
貧困家庭のコロンボ一家は、ローマ郊外のヘロイン中毒者と死にかけた老人ばかりいる地区の、半地下の穴倉のような家に住んでいた。
父親は工事現場で不正労働しているとき、足場から落下して下半身不随の障害者となった。波乱万丈な人生を送ってきた母親のアントニアは、劣悪な住環境を改善すべく努力していた。ガイアと父親の違う4歳差の兄・マリアーノ、双子の弟たちは、「欲しいものを手に入れるには、主張し続けなければならない」が口癖のアントニアの下、厳格に育てられた。
マリアーノが15歳のとき、一家は湖畔の集落にある公営住宅に引っ越した。アントニアは家族を養うために掃除婦として働き、娘をローマの学校へ通わせた。
しかし、ガイアはいじめの対象になった。クラスメイトを妬み、贅沢が許されない貧困の苦しみも鬱積して行き、暴力沙汰を起してしまう。
そして、母の命令に背いてデモに参加した17歳の兄が、祖母の家へ追いやられた。
思春期になると、ガイアは意固地な母親に息苦しさを覚え、次第に攻撃的になって行く・・・

<感想>
頑固で厳格な母親が支配する賑やかな貧困家庭と、そこで生まれ育った赤毛の少女の成長を描いており、プロットと少女の心理描写が秀逸だ。誰も信じられなくて居た堪れない少女の孤独が胸に突き刺さる。
中学を出てすぐ働き出したアントニアは、17歳のときマリアーノを産んだ。相手の男は殺人罪で刑務所に入っている。自分と同じ過ちを娘にはさせたくない、勉学こそが貧困から逃れる道と信じている。
貧困家庭のありふれた話だが、人に自分をさらけ出せない少女の常軌を逸した行動、女友達の裏切りに自殺と病死、色恋沙汰の報復と殺人未遂など、ほろ苦くも面白い青春小説だと思う。
満足度 3.gif


posted by ももた at 08:51| 東京 🌁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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