2024年03月14日

海に呼ばれて ロッカウェイでわたしを生きる

ダイアン・カードウェル 著
満園真木 訳 「ROCKAWAY」
装画 佐藤正樹

<内容>
サーフィンで人生が変わった40代半ばの女性ジャーナリストの、人生のリスタートを描いたノンフィクション。

「プロローグ もう戻れないかも」 「第1部 海辺にて」
「第2部 一歩ずつ」 「第3部 仲間とともに」
「エピローグ わたしの居場所」

<感想>
ニューヨーク・マンハッタンで暮らすダイアン・カードウェルは、5年の間に結婚生活と父と子供を産むチャンスを失った。
離婚して3年後、少しずつ立ち直って前に進もうとしている頃、サーフィンと運命的な出会いをする。
彼女にとって未踏の地ロッカウェイ(ニューヨーク市南端のロッカウェイ半島に点在するいくつかの地域)を、人生再スタートの地に選ぶ。
サーフィン初心者が、多幸感と解放感で病みつきになり、体力作りから始めてレッスンを重ね、集中キャンプにも参加して少しずつ上達していく。そしてサーフィンも園芸もできる家を衝動買いする。
やがて、普段の生活から離れて、ひとりで好きなだけ趣味に没頭できる幸運に気付く。必要なのは生き甲斐だった。
再び不運に見舞われても生き甲斐があれば、人生に立ち向かうことができるのだ。生き甲斐の重要性を教えてくれる良書だと思う。
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posted by ももた at 09:09| 東京 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月12日

海は地下室に眠る

清水裕貴 著
装画 荻原美里

<あらすじ>
2017年秋、千葉市稲毛区にある古い洋館・伝兵衛邸の地下室から作者不明の大きな絵が発見された。
翌年の8月、千葉市美術館の学芸員・松本ひかりと植物彫刻家・椹木正勝は、管理人をしている老婦人・浜中あやめに案内されて、地下室の謎の絵を見学する。
その絵画は大正か昭和初期の、赤いドレスを着た上流階級の日本人女性を描いたものだった。ひかりは情動を揺さぶられ、絵画の来歴調査を買って出た。
ところがひかりは、現代美術のグループ展の準備で忙しくなる。
今年で73歳になる風景画家・沼田春子や椹木正勝、映像作家・黒砂和明らに出展依頼していくと、美容師だった祖母・玉子の若かりし頃の賑やかな日常生活が浮上する。
更に黒砂和明から預かった、千葉の花街として栄えた蓮池にまつわる地元新聞のインタビュー原稿を読むと、祖母は芸妓のぽん太や流転の王妃として知られる嵯峨浩と仲良くしていた。
そして、ひとりっ子だと思っていた父・海彦には、真砂という名の兄がいた。
やがて、75年間も隠してきた蓮池の人たちの秘密が明らかになって行く・・・

<感想>
戦時の過去とコロナ禍の現代を交互に描いている。作者不明の絵画の謎、故宮の御伽噺と赤いドレスで踊る女の怪談、血塗れの着物と黒砂の祖父の過去、失踪事件と家族の秘密など、多くの謎を織り交ぜ、ストーリーが展開する。
清王朝のラストエンペラーと満州国皇帝の弟に嫁いだ日本人女性の話、太平洋戦争中の花街の生活、運命に翻弄された女たちの過去など、歴史ロマンを感じさせる凄く面白いミステリだと思う。
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posted by ももた at 08:42| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月08日

甘くない湖水

カンピエッロ賞受賞
ジュリア・カミニート 著
越前貴美子 訳 「L’ACQUA DEL LAGO NON E MAI DOLCE」
装画 森泉岳士

<あらすじ>
貧困家庭のコロンボ一家は、ローマ郊外のヘロイン中毒者と死にかけた老人ばかりいる地区の、半地下の穴倉のような家に住んでいた。
父親は工事現場で不正労働しているとき、足場から落下して下半身不随の障害者となった。波乱万丈な人生を送ってきた母親のアントニアは、劣悪な住環境を改善すべく努力していた。ガイアと父親の違う4歳差の兄・マリアーノ、双子の弟たちは、「欲しいものを手に入れるには、主張し続けなければならない」が口癖のアントニアの下、厳格に育てられた。
マリアーノが15歳のとき、一家は湖畔の集落にある公営住宅に引っ越した。アントニアは家族を養うために掃除婦として働き、娘をローマの学校へ通わせた。
しかし、ガイアはいじめの対象になった。クラスメイトを妬み、贅沢が許されない貧困の苦しみも鬱積して行き、暴力沙汰を起してしまう。
そして、母の命令に背いてデモに参加した17歳の兄が、祖母の家へ追いやられた。
思春期になると、ガイアは意固地な母親に息苦しさを覚え、次第に攻撃的になって行く・・・

<感想>
頑固で厳格な母親が支配する賑やかな貧困家庭と、そこで生まれ育った赤毛の少女の成長を描いており、プロットと少女の心理描写が秀逸だ。誰も信じられなくて居た堪れない少女の孤独が胸に突き刺さる。
中学を出てすぐ働き出したアントニアは、17歳のときマリアーノを産んだ。相手の男は殺人罪で刑務所に入っている。自分と同じ過ちを娘にはさせたくない、勉学こそが貧困から逃れる道と信じている。
貧困家庭のありふれた話だが、人に自分をさらけ出せない少女の常軌を逸した行動、女友達の裏切りに自殺と病死、色恋沙汰の報復と殺人未遂など、ほろ苦くも面白い青春小説だと思う。
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posted by ももた at 08:51| 東京 🌁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。