<内容>
「はじめに」 「プロローグ」
「第1章 最後の疎開指令」 「第2章 「水軍隊」の誕生」
「第3章 阿鼻叫喚の中で」 「第4章 「あそこに行けば真水がある」」
「第5章 飢餓の島」 「第6章 尖閣はなぜ日本の領土なのか」
「第7章 「舟を造るしかない」」 「第8章 赤い鉢巻の決死隊」
「第9章 奇跡ふたたび」 「第10章 救出船は来た」
「第11章 もう一つの悲劇」 「第12章 ありえない「奇縁」」
「第13章 赤い鉢巻の「主」はどこに」
「エピローグ」「おわりに」
明治時代に実業家・古賀辰四郎が無主の地である魚釣島で真水を開拓した。それに伴い明治政府は国際法に則って1895年1月14日、尖閣諸島を日本の領土とした。
太平洋戦争末期の1945(昭和20)年6月30日、石垣島から台湾に向かって最後の疎開船が出た。
ところが東シナ海で米軍機の攻撃を受け、1隻は沈没した。残った1隻もエンジンが壊れたが、金城珍吉機関長が修理した。そして疎開者・伊良皆高辰の「魚釣島には真水がある」との進言により、戦前に鰹工場のあった魚釣島に上陸した。
しかし魚釣島は、食べる物がない飢餓の島だった。
餓死者が続出する中、遭難者たちは知恵を出し合い、船大工・岡本由雄の指揮の下、難破船から材料を調達してサバニ(小舟)を完成させた。
その少し前、伊良皆高辰が男たち5人を引き連れ、食料調達のために小さな伝馬船で南小島に行ったが、誰も帰還しなかった。
8月12日、若者たちの決死隊8人が、助けを呼びに約170q離れた石垣島へ向かう。8月18日早朝、魚釣島に救助船が来た。
<感想>
「尖閣戦時遭難事件」を描いた歴史ノンフィクションである。
沖縄と尖閣の歴史、沖縄戦と台湾への疎開作戦、戦時徴用船水軍隊の犠牲、中国がルーツの金城家と尖閣戦時遭難事件で重要な役割を果たす金城珍吉、魚釣島と真水を開拓した古賀辰四郎の物語、米軍機の機銃掃射から生き残った人々の悲劇、尖閣の領有権を主張する中国と下條正男・拓殖大学名誉教授による検証等々、勉強になった。
そして、伊良皆高辰氏の長男のエピソードに感動した。
一読の価値がある良書だと思う。