2024年02月29日

尖閣1945

門田隆将 著

<内容>
「はじめに」 「プロローグ」
「第1章 最後の疎開指令」 「第2章 「水軍隊」の誕生」
「第3章 阿鼻叫喚の中で」 「第4章 「あそこに行けば真水がある」」
「第5章 飢餓の島」 「第6章 尖閣はなぜ日本の領土なのか」
「第7章 「舟を造るしかない」」 「第8章 赤い鉢巻の決死隊」
「第9章 奇跡ふたたび」 「第10章 救出船は来た」
「第11章 もう一つの悲劇」 「第12章 ありえない「奇縁」」
「第13章 赤い鉢巻の「主」はどこに」
「エピローグ」「おわりに」

明治時代に実業家・古賀辰四郎が無主の地である魚釣島で真水を開拓した。それに伴い明治政府は国際法に則って1895年1月14日、尖閣諸島を日本の領土とした。
太平洋戦争末期の1945(昭和20)年6月30日、石垣島から台湾に向かって最後の疎開船が出た。
ところが東シナ海で米軍機の攻撃を受け、1隻は沈没した。残った1隻もエンジンが壊れたが、金城珍吉機関長が修理した。そして疎開者・伊良皆高辰の「魚釣島には真水がある」との進言により、戦前に鰹工場のあった魚釣島に上陸した。
しかし魚釣島は、食べる物がない飢餓の島だった。
餓死者が続出する中、遭難者たちは知恵を出し合い、船大工・岡本由雄の指揮の下、難破船から材料を調達してサバニ(小舟)を完成させた。
その少し前、伊良皆高辰が男たち5人を引き連れ、食料調達のために小さな伝馬船で南小島に行ったが、誰も帰還しなかった。
8月12日、若者たちの決死隊8人が、助けを呼びに約170q離れた石垣島へ向かう。8月18日早朝、魚釣島に救助船が来た。

<感想>
「尖閣戦時遭難事件」を描いた歴史ノンフィクションである。
沖縄と尖閣の歴史、沖縄戦と台湾への疎開作戦、戦時徴用船水軍隊の犠牲、中国がルーツの金城家と尖閣戦時遭難事件で重要な役割を果たす金城珍吉、魚釣島と真水を開拓した古賀辰四郎の物語、米軍機の機銃掃射から生き残った人々の悲劇、尖閣の領有権を主張する中国と下條正男・拓殖大学名誉教授による検証等々、勉強になった。
そして、伊良皆高辰氏の長男のエピソードに感動した。
一読の価値がある良書だと思う。
満足度 4.gif


posted by ももた at 10:00| 東京 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月27日

忘れたとは言わせない

スウェーデン推理作家アカデミー最優秀長篇賞、スカンジナヴィア推理作家協会ガラスの鍵賞W受賞作。
〈ハイ・コースト・シリーズ〉@ 
トーヴェ・アルステルダール 著
染田屋茂 訳 「Rotvalta」

<あらすじ>
ウーロフ・ハーグストレームは14歳のとき、16歳の少女リーナ・スタヴリエドのレイプと殺害を自白して少年拘置所に送られた。施設を出ると、里親に引き取られた。
6月末、夏至祭の金曜日、ウーロフは23年ぶりに故郷クングスゴーデンに帰ってきた。犬の哀れな鳴き声を聞き、縁を切られた生家に入り、父スヴェンの死体を発見する。そのまま立ち去ろうとしたところ、隣人パトリック・ニィダーレンに見つかり、通報された。
捜査を担当するのは、ウーロフと同郷の警察官補エイラ・シェディン。彼女はウーロフのことも、リーナの事件のことも覚えていた。
アリバイが証明されたため、警察はウーロフを釈放する。ウーロフは父の飼い犬ラブレを引き取り、父の家に留まった。
エイラが捜査を続けると、38年前に北部ノルランドで起きた若者グループによる集団レイプ事件が浮上する。主犯格のアダム・ヴィーデは名前を変え、スヴェンの隣人として暮らしていた。スヴェンは近隣に性的犯罪者がいるという噂を耳にして、情報収集していたのだ。
そうした中、ハーグストレーム家が放火によって全焼した。襲撃されたウーロフは森へ逃げるが、穴に落下して瀕死の重傷を負う。
やがてエイラはリーナ失踪事件に疑問を抱き、調査に乗り出すが・・・

<感想>
認知症初期の母親と8歳年上の兄に翻弄されている32歳の独身女性エイラを主人公とした、凄く面白い北欧ミステリだと思う。
孤独な老人の死を皮切りに、事件は枝分かれして行き、複雑な様相を見せる。未成年の非行と犯罪、性的犯罪者がいる家族、僻地で暮らす人々とエイラの私生活など、読み応えがあった。
しかし、苦々しい真相だったな。続編が楽しみでならない。
満足度 4.gif

<〈ハイ・コースト・シリーズ〉作品リスト>
@『忘れたとは言わせない』
A『陥没穴(英語版『あなたは決して見つからない』)』B『深い港』

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posted by ももた at 09:19| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月22日

1(ONE)

〈駒子〉シリーズ C
加納朋子 著
装画 十日町たけひろ(旧名 菊池健)

<あらすじ>
瀬尾家には両親と玲奈と少し離れた所に住んでいる兄、そしてかつては〈ワン〉と言う名前の黒い大型犬がいた。
人とのコミュニケーションが下手な玲奈は、大学の入学祝いとして「私だけのわんこ」を飼わせてもらえることになった。
カフェオレ色の雑種の仔犬を〈ゼロ〉と名付けて溺愛し、憂鬱な日常が一変する。
ゼロを主人公にした短編を小説投稿サイトにアップしたところ、読者から感想コメントが届き、DMでやり取りするようになる。
夏休みに入ってすぐ、玲奈はパン屋でアルバイトを始めた。
そんな折、玲奈の周辺に不審な男が現れるようになる・・・

<感想>
投稿小説の読者第1号の正体、ストーカー騒動、別荘地で次々と犬を捨てる犯人捜しなど、ミステリ色はあるものの、あまり強くない。〈駒子〉シリーズのストレートな続編とも言い難い。
しかしシリーズの雰囲気はそのままで、隣人の飼い犬救出作戦、〈ワン〉が家族になった経緯などを描き、楽しく読ませる。読後感のとても良い長編小説だと思う。
満足度 4.gif


<〈駒子〉シリーズ作品リスト>
@『ななつのこ』A『魔法飛行』B『スペース』C『1(ONE)』

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posted by ももた at 08:38| 東京 ☔| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。