2024年01月30日

呪いを解く者

英国SF協会賞YA部門受賞
フランシス・ハーディング 著
児玉敦子 訳 「UNRAVELLER」
装画 牧野千穂

<あらすじ>
ラディス国は、〈政務庁〉と言われる大商人たちによる政府に統治されている。不思議な力を持つ生き物が棲息する〈原野(ワイルズ)〉と戦ってきたが、和平を結んだ。
しかし、クモに似た〈小さな仲間〉たちがもたらす呪いは、人々に大きな影響を与えていた。
呪いを解く力を持つ15歳の少年ケレンは、呪いをかけた人物〈呪い人〉と、呪いを紡いだ理由を見つけて、呪いの糸を解いて取り除く〈ほどき屋〉をしている。
相棒は、継母の呪いによって鳥に変えられていた15歳の少女ネトル。人間に戻ることを拒絶してカモメのままでいる兄ヤニックとネトルは、固い絆で結ばれている。
そしてヤニックは、呪いから救い出された者たちのネットワーク〈復活者会〉の伝言サービスを請け負っていた。
〈復活者会〉の基地はタンジーの食堂。彼女はケレンが最初に〈ほどき屋〉の仕事をした復活者だ。
ケレンとネトルはこれまで、16人の〈呪い人〉を刑務所に送り込んでいた。
ところが、そのうちのひとり、ジェンディ・ピンが鋳掛屋を身代わりにして脱獄した。そして〈呪いの卵(まだ解放されていない呪い)〉を抱えている者は、〈救済団〉と呼ばれる秘密結社に駆け込んでいるらしい。何者かが呪い人の陰謀団を作ろうとしていると言う。
ケレンとネトルは、手掛かりを求めて深原野へと分け入っていく・・・

<感想>
ケレンたちは呪いに悩む人々の依頼を解決し、様々な謎を解きながら冒険の旅を続ける。
〈ほどき屋〉の仕事は、呪いの背景、人間の自分勝手な考え、妬みや憎しみ、弱さと自責の念などを浮き彫りにして行く。謎解きミステリみたいで面白い。
そして呪いを贈る〈小さな仲間〉、片目を捧げた人間に忠誠を誓う〈沼の馬〉と沼の馬人、人の魂を盗む〈踊り星〉、半人間のカモメ少年とコウモリ女など、不思議な生き物が多彩に登場する。
生まれつきの性質で責められるのはおかしい。何事も見かけ通りではない。人間の心は複雑だ。物事は単純ではないと教えられる。示唆に富んだ奥の深いストーリーになっているな。
知らないうちに呪いをかけられていた〈ほどき屋〉の少年と、復活者にして呪い人でもある少女の成長と冒険を描く、不気味でとても面白い異世界ファンタジーだと思う。
満足度 5.gif


posted by ももた at 08:33| 東京 ☀| Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月26日

奇妙な絵

ジェイソン・レクーラック 著
中谷友紀子 訳「HIDDEN PICTURES」
装画 城井文平

<あらすじ>
21歳のマロリー・クインは、薬物依存症から抜け出し、リハビリを続けて18ヶ月、今ではアルコールもドラッグも必要ないと断言できるまで回復した。
ある日、相談役であるラッセルの紹介で、マクスウェル夫妻の5歳の息子テディのベビーシッターを、夏の間だけすることになった。
IT業界で働くテッドと退役軍人病院の精神科医キャロラインは、最近引っ越してきたばかりだった。マロリーは敷地内にあるコテージを与えられた。優しくて内気なテディはお絵描きに夢中だが、空想の友達アーニャがいた。マロリーは次第に一家と打ち解けていく。
ところがある日、いつもは可愛い絵を描いているテディが、森の中で男が女の死体を引きずっている不気味な絵を描いた。それは、かつてこの地で起きた事件を想起させるものだった。殺された画家アニー・バレットは、マロリーが住むコテージをアトリエにしていた。
テディは何かに取り憑かれたかのように、不気味な絵を描き続ける。マクスウェル夫妻に打ち明けるが、取り合ってもらえない。マロリーは頭を悩ませ、庭師にしてカントリークラブ会員の家の息子でスター・ウォーズおたくのエイドリアンに相談する。そして2人は調査に乗り出すが・・・

<感想>
舞台はニュージャージー州南部にある、どこの玄関ポーチにも国旗が掲げられているような、郊外の長閑で小さな町。断薬中の主人公は、母子家庭で育ち、高校在学中にペンシルベニア州立大学から学費免除のスポーツ特待生に選ばれた矢先に、人生のレールを踏み外した。
恐怖を煽るホラー仕立てのストーリー展開に、マロリーの社会復帰、家族の秘密、マロリーとエイドリアンのロマンス、エネルギーリーディングを商売にしている隣人、ウィジャボードの暗号、不気味な絵に隠された驚愕の真相などが相まって、とても面白いミステリだと思う。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:53| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月24日

暗闇のサラ

ジョージア州捜査局特別捜査官ウィル・トレント・シリーズ J
カリン・スローター 著
鈴木美朋 訳 「AFTER THAT NIGHT」

<あらすじ>
レイプされて逃げてきた19歳の医学生ダニ・クーパーが、当直医サラ・リントンに「あいつを止めて」と懇願して亡くなった。
3年後、ダニの両親が、娘の死は幼馴染みである医学生トミー・マカリスターの不法行為が原因だとして、民事訴訟を起こした。
彼がダニに薬を盛ってレイプしたと確信しているサラは、ダニとの約束を守るため、裁判で証言した。
しかし、トミーの両親であるマックとブリットとサラは、過去に因縁があった。そして薬で理性を失っていたブリットが、ダニに起きたことと、15年前のサラの事件は全部繋がっていると口走った。
動揺したサラはフェイスを訪ねて、15年前にレイプされて子供を産めない体になったと告白し、ブリットから言われたことを話した。
彼女たちはウィルと共に、15年前の事件の捜査を非公式に開始する。
そうした中、大学生リーアン・パークが失踪した・・・

<感想>
施設育ちでディスレクシアのウィル、前回の事件で心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったフェイス・ミッチェル、事件の当事者であるサラが、16年間で50人近くの女性をレイプした、金も権力もコネも持っていて自分の行為が招いた結果を直視しないレイプ・グループを暴いて行く。そして、15年前のサラのレイプ事件の真相も明らかになる。
アマンダの仲間が集結するドミノ作戦と、固い絆で結ばれているサラの家族が良いな。フェイスとその息子ジェレミーのエピソードも感動した。犯罪の全容と真相も予想外だったな。凄く面白いミステリだと思う。
しかし最後は、まるでシリーズ完結編みたいに上手く纏めた感がするな。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:59| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。