装画 尾崎伊万里
<あらすじ>
実験都市「WANOKUNI」は、最新のIT技術の粋を集め、前衛的な都市計画に基づいて開発された。地上には個人の住宅や教育施設など、最低限の設備だけを残し、商業施設やオフィス、インフラ設備など、街としての機能の大半は地下にある。
ドローンビジネスを展開するベンチャー企業タラリアは、「WANOKUNI」プロジェクトに参加し、防犯システムに自社製品が採用されている。
災害救助用の国産ドローン「アリアドネ」を担当している入社3年目の高木春生、開発部の我聞庸一、スクール事業部の花村佳代子は、オープニングセレモニーに参加するため、「WANOKUNI」にやって来た。
セレモニー終了後、巨大地震が発生する。緊急災害対策本部に連れて行かれた高木は、地下5層の地下鉄駅ホーム付近にいるはずの行方不明者、中川博美の捜索を依頼される。彼女は県知事の姪で、「目が見えない、耳も聞こえない、話せない」という3つの障害を抱えながら、ユーチューバーとして活躍している。
高木は最新型ドローンを使って、彼女を発見したら救援物資を渡して、近くのシェルターへ誘導するという時間制限のあるミッションに挑むが・・・
<感想>
ファーストコンタクトと誘導方法をクリアしても、要救助者と救助チームのコミュニケーションを繋ぐのは1本のワイヤーのみ。余震、漏電、崩落、機体落下の衝撃による視界喪失、ネズミの集団など、救助の障害の凶報が次々と舞い込み、トラブルが続く。
主人公の口癖と兄を見殺しにした罪悪感、障害詐欺疑惑、暴露系ユーチューバー、失声症の少女とその姉などを絡め、ドローンによる災害救助を描く、面白い小説だと思う。

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