2023年10月29日

ヒマかっ! Get a Life!

日明恩 著

<あらすじ>
17歳の少年・桧山光希の周りにはいつも幽霊がいた。見えたし話すこともできたが、中学3年の1月のあの日以降、どちらも出来なくなった。
7月20日の終業式の朝、全財産約26万円を所持して広島から東京に家出した。10月19日の誕生日になったら、区役所に分籍届を提出するのだ。
7月30日、家出11日目の朝、足場工事会社の須田陽平社長と、見た目がヤンキーなその社員・奥隼人と頭島丈と出会い、拾って貰った。その日から雑用のアルバイトを始め、奥から格安でアパートも提供して貰った。その後、見習い社員になる。
やがて、先輩の頭島が一緒にいるときだけ、再び幽霊が見えることに気づく。
かくして休日は奥が無料で引き受けてきたゴーストバスターズ、またはトラブルシューティングの何でも屋の予定が入り、忙しい日々が始まる・・・

<感想>
特殊能力を持つ主人公と、見た目や持ち物はヤンキーだけど面倒見の良い奥隼人と、見えない幽霊を触れる探偵役の頭島丈が解決する心霊案件は全部で5件。
オカルト現象から始まり、実害が起きている怪奇現象、シェアハウスのストーカー事件、オカルト絡みの業務営業妨害事件と続き、最終話は動物の幽霊が登場する。そして主人公が抱えていた問題も解決する。3人のやり取りが楽しく、読後感の良い連作短編集だと思う。
しかし、物分かりの良い幽霊しか登場しない。設定も家出少年にとって幸運だらけで都合が良すぎると思う。
満足度 2.gif


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『ハンティング・タイム コルター・ショウ』楡周平『ショート・セール』
   

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posted by ももた at 08:42| 東京 ☔| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月26日

リバー

奥田英朗 著

<あらすじ>
ゴールデンウィークが明けて間もない5月8日、飼い犬と散歩中の年金暮らしの老人が、渡良瀬川上流の河川敷で若い女性の全裸死体を発見した。
その一報を受けた群馬県警捜査一課の刑事・斉藤一馬警部補は、10年前に群馬県と栃木県で起きた未解決の渡良瀬川連続殺人事件を想起し、嫌な予感がする。
一方、警察本部の記者クラブでは、現地に捜査一課長臨場と聞き、記者全員が色めき立った。
遺体遺棄現場は、10年前の事件と同じ場所だった。全国紙の新米記者・千野今日子は、先輩記者から10年前の未解決連続殺人事件の解説を聞き、不安を募らせる。
その翌週5月13日、昼休憩中の会社員が、渡良瀬運動公園の駐車場付近の河川敷で、若い女性の全裸死体を発見した。
目と鼻の先に死体を遺棄された栃木県警・足利北警察署の刑事たちは、桐生南署管内で死体が発見されたときから、嫌な予感を抱えていた。
同一犯による連続殺人事件である可能性が高く、捜査本部は群馬県警と共同になった。野島昌弘巡査部長は、この事件が10年前と繋がっているとの思いを強くする。
10年前、栃木県警が容疑者として逮捕した池田清は不起訴となり、覚醒剤所持の懲役を終えてから足利市内で生活保護を受けて暮らしている。桐生市側で娘を殺された写真館経営者・松岡芳邦は、執念深く犯人捜しを続けていた。そして栃木県警の刑事だった滝本誠司は、3年前に定年退職して一般市民となった今も犯人を捕まえたいと思っている。
そうした中、今日子は一風変わった犯罪心理学者・篠田と共に事件を追う。
やがて、それぞれの捜査線上に3名の重要参考人が浮ぶ。群馬・栃木に跨る大事件は合同捜査となった・・・

<感想>
既読感を覚えつつ読み進める。分厚い本だけどそれが苦にならない。事件解決に奔走する刑事たちと元刑事、娘を殺された父親、新たな容疑者たち、スナックの雇われママ、新聞記者と犯罪心理学者らを描き、面白く読ませる。
刑事たちの苦悩と悔恨、老人の執念、謎だらけの人間の心理、解離性同一性障害など、読み応えがあった。
本筋の渡良瀬川連続殺人事件に、元ヤクザの解体業社長失踪事件と中南米の不良グループ、殺人鬼と模倣犯などが相まって、凄く面白い長編警察ミステリだと思う。
しかし、なぜ10年もの空白期間があったのだろう。真犯人の自白がないのですっきりしないな。
満足度 4.gif


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今井敏『遠火 警視庁強行犯係・樋口顕』 米澤穂信『可燃物』
   

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posted by ももた at 09:05| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月24日

ボクの故郷は戦場になった

樺太の戦争、そしてウクライナへ
重延浩 著
カバーイラスト 中村光宏

<内容>
「第1章 樺太は神が造った島と言われていた」
「第2章 大正時代の南樺太に海外の風が吹く」
「第3章 南樺太は激動の昭和を迎える」
「第4章 日本の無条件降伏、だが樺太に終戦はなかった」
「第5章 占領された豊原で生きていくために」
「第6章 樺太に別れの手を振る」
「第7章 戦争を越えて新しい時代へ」
「第8章 南樺太の姿がウクライナの姿に重なる」
「第9章 私たちは心の中に正義の美しい武器を持つべきである」

<感想>
著者は1941(昭和16)年9月4日、日本領土南樺太の豊原で生まれた。1946(昭和21)年12月5日、家や土地、全ての財産を樺太に残して、家族7人で北海道に帰還した。医師の父を持つ子供だった著者の記憶に残る南樺太の姿、そして重延家の歴史を記している。
樺太の歴史、悲惨な戦場と化した南樺太の悲劇、恵須取町の大平炭鉱病院看護婦6人自決の悲劇、北のひめゆり事件と言われる真岡郵便局電話交換手集団自決の悲劇、三船殉難事件(引揚げ船小笠原丸と新興丸と泰東丸が、留萌沖でソ連の潜水艦に襲撃されて沈没した)、ソ連軍占領下の島で暮らす日本人の生活、ウクライナの悲劇など、勉強になった。これまで余り関心がなかったので、丁度良い入門書になった。
満足度 4.gif


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金子俊男『樺太1945年夏』 山本美香『ぼくの村は戦場だった。』
   

『樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇』藤村建雄『知られざる本土決戦南樺太終戦史』
   

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posted by ももた at 09:02| 東京 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。