金庫破りときどきスパイ・シリーズ @アシュリー・ウィーヴァー 著
辻早苗 訳 「A PECULIAR COMBINATION」
カバーイラスト 長崎訓子
<あらすじ>
1940年、第二次世界大戦下の英国ロンドン。
マクドネル家は表向き錠前屋、その裏で金庫破りを生業としていた。
灯火管制が敷かれている8月のある夜、エリーとミック伯父は無人の屋敷に侵入し、金庫を開け、宝石類を盗んだ。
ところが退散しようとしたとき、数人の男たちに囲まれ、エリーとミックは捕まってしまう。その後ふたりは、陸軍のゲイブリエル・ラムゼイ少佐が待つ屋敷に連行された。
そしてラムゼイ少佐は、見事な金庫破りだったと褒めた後、ある取引を持ち掛ける。刑務所に行きたくなければ、ドイツに通じているスパイが所有する政府の機密文書を金庫から回収し、偽文書と入れ替えること。今夜の出来事は、有能な金庫破りを必要としていたラムゼイ少佐の罠だった。
ミックを人質に取られたエリーに選択の余地は無く、その提案を呑む。
ところがエリーとラムゼイ少佐が屋敷に忍び込むと、金庫の扉は開いていて、そばには喉を掻き切られた兵器工場主トマス・ハーデンの他殺体があった。そして誰かが、エリーたちに先んじて文書を入手していた。
エリーとミックは売国奴の正体を突き止め、機密文書がドイツに渡るのを阻止するべく、ラムゼイ少佐に協力するが・・・
<感想>
凄腕の金庫破りと堅物の青年将校の活躍を描く、凄く面白いコージーミステリだと思う。
主人公のエリーことエレクトラ・ニール・マクドネルは、刑務所生まれの24歳アイルランド系美人。幼い頃にミック伯父に引き取られ、家政婦のネイシーことナンシー・ディーンが母親同然の存在。きちんとした教育を受け、上流階級の裏表を学び、年上の従兄弟トビーとコルムから妹のように可愛がられて育った。勇敢で冷静なうえ頭脳明晰で、記憶力や演技力もあり、勝気で肝が据わっている。
そしてマクドネル家の友人であり、エリーの男友達でもある元海軍兵フェリックス・レイシーは、冷静沈着で、機略縦横で、緊急事態にも狼狽えないハンサムな贋造師。
一方、伯爵の甥であるゲイブリエル・ラムゼイ少佐は長身のブロンドで、どんな女も振り返る眉目秀麗な30代前半の紳士。
そんな彼をエリーは横柄な堅物と見做し、少佐も高圧的な態度だったが、次第に仲間意識が出てくる。定石通りの展開だが、スパイゲームや魅力的なキャラクターと時代背景が相まって読ませる。
戦争という困難な状況の真っ只中にいても、希望を見失わない彼らから勇気を貰った。
2作目『The Key To Deceit』が楽しみだな。
満足度
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posted by ももた at 08:45| 東京 ☁|
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