2023年04月27日

シャルロットの憂鬱

元警察犬シャルロット・シリーズ @
近藤史恵 著
装画 白根ゆたんぽ

<内容>
4歳で警察犬をリタイアしたジャーマン・シェパードと不妊治療を諦めた飼い主夫婦を描く短編「シャルロットの憂鬱」「シャルロットの友達」「シャルロットとボーイフレンド」「シャルロットと猫の集会」「シャルロットと猛犬」「シャルロットのお留守番」を収録したコージーミステリ。

<感想>
タイトルになっている「シャルロットの憂鬱」は、『近藤史恵リクエスト!ペットのアンソロジー』にも収録されている。
大型犬を見かけると恐怖を感じていたが、シャルロットは甘えん坊で、人と犬が大好きな賢い犬。飼い犬への愛情と夫婦愛を感じて優しい気持ちになれる。心が温まるな。素敵な連作短編ミステリだと思う。
満足度 5.gif



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『三つの名を持つ犬』 『賢者はベンチで思索する』 『ふたつめの月』
  


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posted by ももた at 09:08| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月25日

最終法廷:ヨアヒム・フェルナウ弁護士

ヨアヒム・フェルナウ弁護士シリーズ B
エリザベート・ヘルマン 著
浅井晶子 訳 「DIE LETZTE INSTANZ」
カバーイラスト 光嶋フーパイ

<あらすじ>
名門フンボルト大学の同期である、刑法一辺倒の弁護士ヨアヒム・フェルナウと社会派弁護士マリー・ルイーゼ・ホフマンは、破産寸前の法律事務所を共同経営している。
ある日、ヨアヒムの依頼人でホームレスの若者ヘルマーが、州裁判所の前で老婦人に銃撃された。
ヘルマーは逃げ、警官たちがその場で71歳のマルガレーテ・アンテンブルクを逮捕した。その直後ザロメ・ノアック検事と、ベルリンで最も名を知られた司法記者アルタイが現れ、ヨアヒムは成り行きから謀殺未遂事件を手に入れた。
マルガレーテは、ポーランド国境の小さな町ゲルリッツから牧師と聖書勉強会の会員と共に、コーヒーとケーキ付きのバス旅行でベルリンにやって来た。ヘルマーとは面識がなく、武器の出どころ、犯行動機についても堅く口を閉ざしている。
ヨアヒムはマルガレーテの依頼で彼女の家へ行き、指定された葉巻の箱と着替えを持ち帰ろうとするが、彼女の友人オトマー・コプリーンから食事に誘われ、家を空けていた隙に葉巻の箱が消えてしまう。
葉巻の箱には、ロシア製マカロフの薬莢が8発入る小箱と、破られた結婚式の写真と、新聞記事の切り抜きが入っていた。
ヨアヒムは薬莢の小箱を盗んでいた。ヘルマーへの銃撃は、協力者がいて周到に練られた殺人計画だった。
ヨアヒムがベルリンへ戻ると、マルガレーテは脳出血を起して亡くなっていた。検察は事件の捜査を終了させた。
ところがヘルマーは、コプリーンに追われていた。納得のいかないヨアヒムは事件の背景を追う・・・

<感想>
読み進めていくと第二次世界大戦の傷跡、東西ドイツ分断時代の名残り、統一後の東ドイツ出身者の不遇、人命が失われたのに罪人がいない理不尽と司法への失望が見えてくる。そしてユーモアのある文章と、迫り来る事務所立ち退きの脅威が相まって楽しく読ませる。
ヨアヒムは、憲法裁判所裁判長の妻である野心的なザロメに夢中になりつつも、東西ドイツ統一直後のゲルリッツでの出来事、6年前にお蔵入りした薬物依存症患者による悲劇的な事件、子供がトラックに轢かれた交通事故、不動産投資家の不審死、謀殺未遂事件、ホームレスの凍死、看護師の事件、未成年者による殺人事件など、無関係に思える5つ犯罪と加害者5人の関連性を明らかにして行く。
しかし、真相に辿り着いたと思っても、まだ裏がある。一筋縄ではいかない展開だ。そして「最終法廷」とは、裁判所近くにある居心地の良い小さなレストランのことだった。
また脇役もヨアヒムの母とその同居人、自動車整備工場を経営する友人ヤツェクとその従業員タデウシュ、大学の同期で友人でもある弁護士マークヴァート、新聞社で実習中の女子高生ヤナ、ヨアヒムの事務所の元実習性ケヴィンなど多彩に登場する。そのエピソードがとても面白い。
連続殺人の真っ只中にいるヨアヒム・フェルナウ弁護士とその仲間たち、そして人間ドラマと罪と赦しを描いた、凄く読み応えのあるドイツミステリだと思う。
本シリーズはテレビドラマ化しており、2020年夏には最新刊である第7作が出たそうだ。続編が楽しみでならない。
満足度 5.gif



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<ヨアヒム・フェルナウ弁護士シリーズ作品リスト>
@『子守の少女』 A『七時間目』 B『最終法廷』
C『埋もれた墓標』・・F『デュスター湖(Dustersee)』


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posted by ももた at 09:31| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月21日

昨日の海は

(昨日の海と彼女の記憶)
近藤史恵 著

<あらすじ>
四国の南側にある海に面した温暖な土地・磯ノ森。
大人しくて口下手な優等生タイプの高校1年生・大江光介は、母方の祖父母が遺した店舗付きの広くて古い日本家屋で、旅館のマネージャーをしている父・亮介と母・夢と3人で暮らしている。
海と山以外何もない小さな田舎町の夏休みに飽き飽きしていたところ、東京から来た母の姉・芹とその8歳の娘・双葉が、使っていない2階で暮らすことになった。
マニアックな人気を誇る写真家だった祖父・高郷庸平とそのモデルを務めていた祖母・華子は、25年前、母が16歳のとき海で心中した。高校を卒業した伯母が東京に出て働き、母の学費を出して家の借金も返済した。
芹はシングルマザーだった。両親の死は無理心中事件であり、磯ノ森で生きていくために事実をはっきりさせたいと思っている。妹が封印した店舗部分を片付け、掃除して、光介の同級生・大谷絵里香にシャッターの絵を描いてもらい、写真屋の再開を目指す。
一方、芹の決意を聞き、祖父の遺作を見た光介は、祖父母の事件のことが頭から離れなくなった。そこで祖父母の死の真相を追うが・・・

<感想>
思いやりに満ちている家族と少年の成長を描いた、感動的な青春ミステリだと思う。
都会で働いていた芹が、家族や親戚のいる故郷へ戻る切っ掛けは、双葉の「ひとりでお留守番できる」という母を思いやる言葉。
その双葉がちゃんとした家の子ではないと責められたとき、夢は一緒になって怒った。
亮介も双葉が犬を飼いたいと言ったとき、母娘が遠慮せずに家に居られるように大型犬の仔犬を貰ってきた。
光介は戸惑いつつも姪の面倒をちゃんと見ている。
そして過去と向き合う芹と過去を忘れたい夢姉妹も互いを尊重し、思いやっている。
「生きている人を傷つけてまで知りたい真実などない」「自分の意に反しても全力で応援する」のだ。この家族関係の距離感が凄く好いな。
そして肝心の謎解きも、ドラマチックな展開こそないが、プロット、伏線がしっかりしているので面白く読ませる。光介が辿り着いた真相は少し切ないけれど、読後感がとても良い。巧い作家さんだと思った。
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<整体師探偵・合田力シリーズ>
@『カナリヤは眠れない』 A『茨姫はたたかう』 B『Shelter』
  


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posted by ももた at 09:52| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。