カバーイラスト 嶽まいこ
<内容>
7名の人気作家がお金にまつわる悲喜交々を描く、書き下ろし短篇集。
「百万円分の無駄/新津きよみ」
「一生遊んで暮らせる方法/原田ひ香」
「12万円わんこ/大崎梢」
「廃課金兵は買い物依存症の夢を見るか?/永嶋恵美」
「わらしべ長者のつくりかた/福田和代」
「塾に行かない子どものための五つのクリンプス/図子慧」
「二千万の差額/松村比呂美」
<感想>
「百万円分の無駄」は、宝くじで100万円当たった64歳専業主婦の、無駄を極める作戦。バカバカしくて呆れる。彼女が平均的な家庭の、平凡な年金生活者になるのなら、日本はまだ裕福なのだと思った。
「一生遊んで暮らせる方法」は、17年も役所の非常勤で働いている36歳の女性と、自分の考えを押し付けて手痛いしっぺ返しを食らう倹約家の夫の話。夫婦でも経済的自立は必須だと思った。
「12万円わんこ」は、タレント犬のシビアな世界を描いており、元モデルの紆余曲折、愛犬から得たもの、大型犬のいる生活などが相まって、とても興味深く面白かった。
「廃課金兵は買い物依存症の夢を見るか?」は、コロナ禍でリモート飲み会を始めたアラフォー女子の話。非正規雇用の派遣社員、ゲームの課金とキャラクター推し、買い物依存症と転売ヤーなど、現代社会の世相を反映した話になっている。
「わらしべ長者のつくりかた」は、棚ぼたで金を稼ぐ方法を探していた若者の成長物語。人生の大先輩である祖父に唆されて作った牛乳パックの万華鏡が予想外の展開を見せ、楽しく読ませる。
「塾に行かない子どものための五つのクリンプス」は、シングルマザーの子育てを描いており、小学校の授業崩壊と子供の学力、魔女裁判みたいな保護者会の衝撃、放課後の居場所問題、中学受験と進学塾、悪い友達など、現代の子育ては大変だな。経済的な問題よりも、親の無知と怠慢が子供を不幸にすると思った。
「二千万の差額」は、長年連れ添った夫に縊死されてパニック障害になった、独り暮らしの老女の話。ネットショッピングのトラブル、悪質な内職詐欺、敢えて苦手なことに挑戦する暴露療法など、面白く読ませる。本作では娘が直ぐに駆け付けてくれるが、現実は老人を狙った犯罪が社会問題となっている。考えさせられるな。
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