装画 黒川雅子
<あらすじ>
食品卸会社の社長・篠原紀昭が失踪した。後妻の真須美によれば、篠原は闇金業者に脅迫されていて、手形が不渡りとなって自殺の恐れがあると言う。遺書はないが、篠原の生命保険の死亡時受取額は9千万円だった。
大阪府京橋署暴犯係の刑事・礒野と上坂は、闇金絡みで事件性があると認め、真須美の捜索願を特異行方不明者として受理した。このとき真須美は、受理証明書を求めた。
捜査を進めていくと、礒野と上坂は奇妙な金の流れに気付く。篠原は循環取引(商品は動かさずに金と伝票だけを循環させる。複数の企業が示し合わせて商品の転売や業務委託などの相互発注を繰り返すことで架空の売上高を計上して、実際の業績よりも良く見せる。粉飾決算。)の手口で騙されていた。それに篠原の死亡保険金額は1億2千万円だった。
その後、篠原の遺体が高速道路の非常駐車帯の車内で発見された。死因は青酸中毒死。礒野と上坂は服毒自殺とみて捜査を続行するが、次々と腑に落ちない点が出てくる。Nシステムの画像を精査すると、何者かが篠原に成りすまして車を運転しており、篠原は他殺だった。
そこで暴犯係仲村班の6人の刑事は篠原殺しを追う。事件は思わぬ広がりを見せ、連続殺人事件が浮上する・・・
<感想>
38歳バツイチで博打麻雀と風俗通いもする酒呑みの喫煙者・礒野。訊き込みが巧く肥っていて痛風持ちの映画オタク・上坂。警察官の賭博も風俗通いもダメだと思うが、この異色コンビが愉しい。
強者揃いの仲村班の労力と執念の捜査を描いており、ヤクザのシノギとそれに連なる悪党に強かで薄幸な女、資金繰りの苦しい経営者に手形を書かせて資産を食い荒らした挙句破産に追い込み、連帯保証人になっている家族までも破滅させるフロント企業の悪辣なやり口などが相まって面白く読ませる。分厚い本だけに読み応えのある警察小説だと思う。
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