2023年01月27日

炎の爪痕

ジミー・ペレス警部シリーズ G 完結編
アン・クリーヴス 著
玉木亨 訳 「WILD FIRE」
カバーイラスト 松田真由美

<あらすじ>
英国シェトランド本島の北側にある集落デルタネス。
ロンドンから家族と共に移住してきたヘレナ・フレミングは、農場の前の持ち主デニス・ギアが納屋で首吊り自殺して以来、誰かが家に侵入して奇妙な絵が描かれている紙片を残していくことに悩まされていた。
また、建築家の夫ダニエルは鬱病を抱えており、11歳の息子クリストファーは自閉症スペクトラム障害だった。フレミング一家は、地元住民の悪意ある噂話の標的になっていた。
そこでヘレナは、非番のペレス警部の家を訪ねて非公式に相談する。
その翌日、クリストファーが、納屋で若い女性の首吊り死体を発見した。
現場の光景は、家に匿名で届けられた絵にそっくりだった。首吊り死体は、ロバート・モンクリーフ医師一家の住み込みの子守りエマ・シアラーだった。
首吊り死体発見直後に現場に駆け付けたペレスは、自殺に見せかけた他殺だと確信する。インヴァネス署の主任警部ウィロー・リーヴズに来てもらい、部下のサンディ・ウィルソン刑事と共に捜査に当たるが・・・

<感想>
ペレスたちが捜査するのは、暴力に付き纏われていた若い女性と、嫉妬や妬みから逃れられなかった中高年女性の殺害事件。被害者と加害者と事件関係者の家族の問題が明らかになって行く。シェトランド諸島の風土と登場人物たちの心理を丁寧に描いており、味わい深く読み応えがあった。
巧妙なプロットと伏線が相まって、凄く面白い本格的な英国ミステリだと思う。
そして本書は、CWA最優秀長編賞受賞作『大鴉の啼く冬』から始まった本格ミステリ・シリーズの最終巻である。当初は、画家フラン・ハンターが主人公だった。それが第4作目で殺害されてしまい、衝撃を受けた。本書でもそのことに言及しているが、完結してみれば、しっかりジミー・ペレス警部シリーズになっている。その人間ドラマも面白いシリーズ物だと思う。シリーズ完結は残念でならない。
満足度 5.gif



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posted by ももた at 10:44| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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