2022年12月27日

熊と小夜鳴鳥

冬の王1(3部作)
キャサリン・アーデン 著
金原瑞人/野沢佳織 訳 「THE BEAR AND THE NIGHTINGALE」
カバーイラスト 海島千本

<あらすじ>
14世紀半ば、ルーシ北部の小さな村レスナーヤ・ゼムリャ。
領主の妻マリーナは、金袋(カリタ)と仇名されたモスクワ大公イワン1世の、不思議な妃の唯ひとりの子だった。1年が終わろうとする11月のある日、マリーナは4人の子供たちを年老いた乳母ドゥーニャに託し、末娘ワシリーサ(ワーシャ)を出産して死んだ。
姉のオリガは普通の娘で美しく従順だが、ワーシャは祖母の血筋を受け継ぎ、人には見えない精霊(チョルト)を見る特別な力を持っていた。6歳のとき、雪の降る森で道に迷い、霜の王にして冬の王でもあるマロ―スカとその双子の弟メドベードに出会う。
その後、領主ピョートル・ウラジーミロヴィチは、長男ニコライ(コーリャ)と次男アレクサンドル(サーシャ)を連れてモスクワへ旅立ち、新しい妻アンナ・イワノヴナを連れて戻った。
アンナはモスクワ大公(マリーナの腹違いの兄)の娘で、人には見えない精霊を見て悪魔と呼び、いつも怯えていた。
その年の秋、コーリャが近隣の貴族の娘と結婚して家を出た。その後、若きセルプホフ公(ウラジミール・アンドレーエヴィチ)が村を訪れ、14歳のオリガと婚礼を挙げてモスクワへ連れ帰った。サーシャは、モスクワ大公の幼い跡継ぎ王子ドミトリーを守るため、父親の反対を押し切ってこの旅に同行し、修道士セルギイの修道院に入った。そして、ピョートルとアンナの間に娘イリーナが誕生した。
日が流れ、季節も流れ、ワーシャは成長し、継母アンナを避けて7年近くの歳月が平穏に過ぎた。ワーシャは用心することを学び、あらゆる精霊と密かに親しくしていた。
ワーシャが14歳になった年、モスクワ大公国の摂政であるアレクセイ府主教は、ドミトリー王子の即位を計画する。若き司祭コンスタンチン・ニコノヴィチは大変な美貌の持ち主で、彼の描く聖画のイコンは人々を惹きつけていた。府主教は、王子の公位継承を妨げる恐れのある司祭を、僻地レスナーヤ・ゼムリャへ厄介払いする。
夏の盛りに村に到着した司祭は、悪魔を怖れるアンナの告白を聞き、村人たちの精霊信仰を厳しく禁じた。
村人たちが古いしきたりを疎かにして捧げ物を止めたため、人々を悪しきものから守っていた精霊たちの力も弱くなって行き、「食らうもの」が目覚めた。精霊たちの警告や予言は謎めいていて、ワーシャには解らなかった。
しかし冬至の頃、冬の王がワーシャを迎えに来る。娘を愛しているピョートルは、その前にワーシャを裕福な男に嫁がせようとするが、跳ねっ返りの娘は婚約者を怖気づかせて追い返してしまう。
一方、アレクサンドル修道士となったサーシャは、「タタールのくびき」から逃れるべく画策していた。ドミトリー大公がキプチャク・ハン国と戦うと決断したとき協力するよう、キリスト教徒の一族である父に使者を送るが、タタール人の包囲を恐れるピョートルは断った。
やがて厳しい冬が到来、寒さと闇の魔物が村を襲う。ワーシャはすぐ上の兄アリョーシャ(リョーシカ)に助けてもらい、魔物と戦うが・・・

<感想>
自由に自分らしく生きようとする少女の成長と奮闘を描いており、湖や森の精、家や庭の精などのキャラクターがユニークだ。
厳しい風土と農場の生活、女性軽視と偏見、恐怖で人を支配するキリスト教神父、土地に根付いている精霊信仰、当時の歴史などが相まって、凄く面白い長編ファンタジーだと思う。
そして、主人公よりもその父親が凄くカッコイイ。ピョートルは、息子を束縛しないし、進路の邪魔もしない。領主としての責務や家長の役割を重視して、彼らの保護と安全を計る。その姿勢は頑としてブレない。子供たちと魔物の間に立ちはだかり、「領地から出ていけ。」「男は自分以外の者の命を身代わりに差し出したりしない。我が子の命なら尚更だ。」と言い放つ。魔物に挑むピョートルの勇気と大きな父性愛に感動した。変わり者と陰口を叩かれても、兄妹仲が良いのも好いな。
また、舞台となるのはロシア発祥の地とされる地域。最近、ウクライナ関連の本を読み漁っているので、「タタールのくびき」や「ルーシの洗礼」など、勉強になった。続編が楽しみでならない。
満足度 5.gif



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posted by ももた at 09:21| 東京 ☀| Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月25日

戦争日記:鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々

オリガ・グレベンニク 著
渡辺麻土香/チョン・ソウン 訳「WAR DIARY」
ロシア語監修 奈倉有里

<内容>
絵本作家のオリガ・グレベンニクとその家族が、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから地下生活を経て国外に脱出するまでの実体験を文章と絵で綴った日記。

<感想>
絵本作家のオリガ・グレベンニク氏は、開戦から9日目に2人の子供を連れてハリコフ(ハルキウ)からリヴィウを経てワルシャワ、そしてブルガリアへ逃れた。
戦禍から逃れるには、即決即実行。彼らには逡巡している暇はない。そして生き延びるためには、あらゆる伝手を頼る。
主に絵と走り書きみたいなロシア語の原文から成る薄い本だが、生存の危機がひしひしと伝わってくる良書だと思う。
しかし、「国の命令により戦争の最中から逃れないとしても、武器を持って戦うのではなく人の命を救うことだけをするという選択肢は残されている。」という、ロシア文学翻訳者奈倉有里氏の一文に引っ掛かりを覚えた。
外交の失敗や過去の経緯がどうであれ、国家存亡の危機に、武器を持って戦うのが嫌だからと後方支援に回る人ばかりになったら、ウクライナの子供たちに未来はあるのかな。ウクライナの志願兵は愛する家族を守るため、他の選択肢が残されていないから武器を持って戦っているのだと思う。
満足度 3.gif



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posted by ももた at 09:26| 東京 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月24日

電子レンジが壊れた!



ご飯を温めようとしたら電子レンジの電源が入らない。
うんともすんとも言わない。ショック!
2001年製、東芝電子レンジ。お疲れ様でした。

posted by ももた at 00:22| 東京 ☀| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。