2022年11月30日

父親たちにまつわる疑問

私立探偵アルバート・サムスン・シリーズ H
マイクル・Z・リューイン 著
武藤陽生 訳 「ALIEN QUARTET」
カバーイラスト 杉田比呂美

<内容>
「それが僕ですから」「善意」「おまけのポテトフライ」「父親たちにまつわる疑問」を収録した連作中篇ミステリ集。

<感想>
「それが僕ですから」は、父親がエイリアンだと思い込んでいる男性、本名カーティス・ネルソンから依頼された空き巣事件。それをサムスンが首尾よく解決すると、面倒な変人でも優しい心を持っている彼は、会うたびに名前を変えて次々と仕事を運んでくる。
「善意」は、虐待を受けた女性の話。「おまけのポテトフライ」は、やりたくないダイエットを強制されている父親の話。そしてタイトルになっている「父親たちにまつわる疑問」は、行方不明の相続人探し。サムスンの父親の話も出てくる。
ユニークなキャラクターが多彩に登場し、とても面白いミステリだと思う。
満足度 5.gif



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『沈黙のセールスマン』  シャルロッテ・リンク『沈黙の果て』
  


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posted by ももた at 08:59| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月28日

八月の母

早見和真 著

<あらすじ>
27歳の美容師・陽向と、飲料メーカー勤めの5つ年上の夫・健次は、多感な時期を過ごした街を心の底から恨んでいた。
父親のいない越智エリカは、1977年8月15日に愛媛県伊予市で生まれた。小さい頃から絶対に男を信用するなと言われて育った。瀬戸内海に面したこの街から出て行くのが夢だった。
しかし、スナックを経営する母・美智子が逃がしてくれなかった。10代のエリカは、母と同じようにシングルマザーとなった。父親の違う子供を3人も生み、母子が暮らす団地の一室は、行き場のない少女たちや不良少年たちの溜まり場になって行く。
そうした中、茹だるような猛暑だった2013年8月、事件は起きた・・・

<感想>
読了後、胸が痛くなる。感情をコントロールできない人間が怖くなった。
二度と起きてはいけない、悍ましく残虐非道な事件を描いており、ネグレクト、性的虐待、弱い者虐め、家庭内暴力、男に翻弄される母親、家庭の歪みと共依存、祖母から母へ娘へと続く負の連鎖、忌み嫌う親の遺伝子と生育環境、閉鎖的な性差別、少年少女の非行、集団ヒステリー等々、考えさせられたな。
満足度 3.gif



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マイクル・コナリー『ダーク・アワーズ』
   


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ラベル:早見和真 星3
posted by ももた at 09:11| 東京 ☀| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月24日

小隊

砂川文次 著

<あらすじ>
ロシア軍が北海道に侵攻した。重要施設に対するミサイル攻撃に続き、地上部隊の上陸があった。
少ししてから自衛隊の27連隊が戦闘団として展開するが、ロシア軍も自衛隊もお互い陣地を張ったきり、膠着状態となった。
その頃、自衛隊の3等陸尉・安達は、小隊を率いて避難誘導任務についていた。命じられたことを淡々とこなしていたところ、敵の活動が活発になってきた。そして、敵の来襲が明日あるかもしれないとの情報が降りてきた。
とうとう姿を現したロシア軍によって戦場は地獄と化す・・・

<感想>
自衛隊の初めての戦闘を描いており、世界情勢が不穏なこの時期とても興味深い戦争小説だと思う。
軍事描写のリアルさが話題となり、専門家を唸らせた、元自衛官の芥川賞作家による衝撃作らしいが、素人には分かりにくいうえ、読み辛いな。
しかし、近接戦闘シーンは迫力があり、一気に読ませる。
戦地から退避しない住民の言い分、ミニチュアを用いて行われる戦闘指導、実戦経験のない自衛隊員の精神状態など、勉強になった。
満足度 3.gif



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『中国・ロシアに侵される日本領土』 『日本人が行けない「日本領土」』
   


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posted by ももた at 09:08| 東京 ☀| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。