樋口明雄 著
装画 山田章博
<あらすじ>
オカルト雑誌の編集者・野々村舞は、伝説とか独特の不思議な話や実話怪談を集めて特集記事にするため、ユネスコの世界自然遺産・屋久島へ飛んだ。
大学在学中は共に山岳部に所属し、日本各地の山に登っていた高津夕季と、5年ぶりに再会する。大学卒業後、夕季は警察官となって故郷の屋久島警察署で山岳救助をしていた。舞と夕季は、温泉でエキゾチックな美女とすれ違い、彼女に既視感を覚えた。
その翌日、舞はネットで見つけたベテランのツアーガイド・狩野哲也と共に、河童博士と呼ばれている老人や巫女をしている老婆・岩川タネに会う。そして、タネの孫娘で巫女の血を引くという依里から、この世のものではない存在が見える能力を授けられた。
その後、山の怪奇に詳しい猟師・菊永悟郎に会おうとしたが、約束をすっぽかされた。彼は山で怪死していたのだ。
その翌日、舞と狩野、彼のアシストである大学生・清水篤史は、九州最高峰の宮之浦岳縦走へ向かう。そして舞は、温泉ですれ違った美女とまた遭遇する。東京から来た国津早紀と名乗るその女性を、狩野も居酒屋で見かけていた。
ところが篤史は、彼女を目撃していなかった。舞と狩野は登山中、幽霊を度々見かけ、言い知れぬ不安を感じた。
そうした中、シャクナゲのお花畑にいた舞が、狩野と篤史の前から忽然と消えた。山岳救助隊が駆け付け、舞を捜すも見つからない。彼女は異世界に迷い込んでいた・・・
<感想>
読み進めていくと、舞は豊鍬入姫命(日本書紀に名前が出てくる紀元前の人物。神人分離の基を作ったと言われ、倭姫命とともに伊勢大神の斎王の始祖として知られている。)の末裔で、特別な生贄として魔物に狙われていると判る。その後、島のあちこちで怪奇現象が起こり、異常事態になる。
屋久島観光と登山、怪死事件や山姫(海神の娘、豊玉姫の怨霊)伝説、日本の神話と平家落人伝説などが相まって楽しく読める、伝奇ホラー&冒険小説だと思う。
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