2022年09月07日

戦争は女の顔をしていない 2

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 原作
小梅けいと 画
清水螺旋人 監修

<内容>
ノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』を漫画化したもの。

「第8話 人間は戦争よりずっと大きい」
「第9話 狙撃兵マリヤ・イワーノヴナ・モローゾワ(イワーヌシュキナ)兵長の話」
「第10話 モスクワに向かう汽車の中にて」
「第11話 母のところに戻ったのは私一人だけ」
「第12話 お母ちゃんお父ちゃんのこと」

<感想>
ロシアでは大祖国戦争と呼ばれる第二次世界大戦の独ソ戦(1941〜1945)を描いており、ベラルーシとウクライナも戦場だった。
スターリングラード近郊ではドイツ兵の死体が至る所に転がっていて、砲弾を運搬していた女性は、車輪の下で頭蓋骨が折れる音が聞こえると嬉しかったと言う。たじろぐなぁ。
そして、戦争中に75名を殺害した狙撃兵マリヤ・イワーノヴナ・モローゾワは、終戦後、ミンスクの車両工場で経理をしていた。ちゃんと女兵士たちの戦友会もあり、原作者のところには国中から手紙が届くようになったそうだ。
第11話は、戦車部隊の衛生兵ニーナ・ヤーコヴレヴナ・ヴィシネフスカヤの話。
第12話は、ドイツ軍に占領されたベラルーシの村の話。捕虜を身内と偽り引き取ったが、ドイツの司令部に密告された。ドイツ軍は捕虜を村はずれに連れて行き、銃殺したそうだ。そして退却するときは村に火を放ち、何もかも持って行った。戦争以外の思い出がないと言う老婆の話は重いな。
満足度 3.gif



人気ブログランキング
『セカンドハンドの時代』  平井美帆『ソ連兵へ差し出された娘たち』
   


人気ブログランキング
posted by ももた at 08:43| 東京 ☁| Comment(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月05日

優等生は探偵に向かない

ピップ・シリーズ A
ホリー・ジャクソン 著
服部京子 訳 「Good Girl, Bad Blood」

<あらすじ>
イギリスの小さな町リトル・キルトン。女子高校生のピップことピッパ・フィッツ=アモービは、ポッドキャスト番組を立ち上げ、自分が関わった事件の裁判の様子を配信していた。
そんな中、友人であるコナー・レイノルズの兄ジェイミーが、サルとアンディの追悼式の後、行方不明になった。
コナーとその母親からジェイミーを探してくれと頼まれたピップは、ポッドキャストで調査の進捗を配信し、リスナーから手掛かりを集めることにした。
するとジェイミーは、追悼式の後、スティーヴン・トンプソンの家で開かれたカラミティ・パーティーに行っていた。不動産会社での職を失い、生死に関わるトラブルに巻き込まれていた。
そして、刃渡り6インチの肉切りナイフが、レイノルズ家から消えていた。ジェイミーは、別人に成りすました誰かに騙されたと気づいた直後に、失踪していた。
ITを駆使する素人探偵コンビ、ピップとラヴィは、ジェイミーが最後にいたと思われる地域を推定し、彼の行方を追うが・・・

<感想>
シリーズ1作目の真相が語られているので、そちらを先に読むことを勧める。
前作『自由研究には向かない殺人』同様、主人公の若い直向きさが好ましく、ピップとラヴィのエピソードも楽しい。真相も一筋縄では行かないものになっており、とても面白い青春ミステリだと思う。
しかし、今回ピップは少しやりすぎかな。裁判の結果と失踪事件の決着も苦々しいものだったな。
最終作でもある第3作『As Good As Dead』(2021)が楽しみだ。
満足度 3.gif



人気ブログランキング
『その少年は語れない』   『沈黙のセールスマン』
   

シヴォーン・ダウド 『ロンドン・アイの謎』 『ボグ・チャイルド』
   


人気ブログランキング
posted by ももた at 09:02| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月02日

掃除婦のための手引書

ルシア・ベルリン作品集
ルシア・ベルリン 著
岸本佐知子 訳 「A MANUAL FOR CLEANING WOMEN: Selected Stories」

<内容>
ルシア・ベルリン(1936〜2004)は、生涯に76の短編を書いた。
2015年、全作品の中から43篇を選んだ作品集『A MANUAL FOR CLEANING WOMEN』が、リディア・デイヴィスの序文「物語こそがすべて」と共に出版され、ベストセラーとなった。その中から24篇を選んで翻訳したもの。

エンジェル・コインランドリー店/ドクターH.A.モイニハン/星と聖人/掃除婦のための手引書/わたしの騎手/最初のデトックス/ファントム・ペイン/今を楽しめ/いいと悪い/どうにもならない/エルパソの電気自動車/セックス・アピール/ティーンエイジ・パンク/ステップ/バラ色の人生/マカダム/喪の仕事/苦しみの殿堂/ソー・ロング/ママ/沈黙/さあ土曜日だ/あとちょっとだけ/巣に帰る

物語こそがすべて リディア・デイヴィス

アラスカで生まれたルシア・ベルリンは、鉱山技師だった父親の仕事の関係で、幼少期は北米の鉱山町を転々とした。
5歳のとき、父が第二次世界大戦で出征すると、母と生まれたばかりの妹と共にテキサス州エルパソの貧民街にある母の実家に移り住んだ。
祖父は腕のいい歯科医だが、酒浸りでみんなに嫌われていた。そして、母も叔父もアルコール依存症という環境だった。
終戦後、両親と妹と共にチリのサンチャゴに移住し、成長期を過ごした。
18歳でニューメキシコ大学に進む。在学中に最初の結婚をし、2人の息子を儲けるも離婚した。
1958年、ジャズピアニストだった2番目の夫と共にニューヨークに移り住む。
ジャズミュージシャンだった3番目の夫と1961年からメキシコで暮らし、2人の息子を儲けるも夫の薬物中毒などにより、1968年に離婚した。ベルリン姓は、この最後の結婚のものである。
1971年からカリフォルニアのオークランドとバークレイで暮らし、高校教師、掃除婦、電話交換手、看護師などをして働き、シングルマザーとして4人の息子を育てた。この頃からアルコール依存症に苦しむようになる。
1985年、「わたしの騎手」がジャック・ロンドン短編賞を受賞した。
1990年代に入り、アルコール依存症を克服してからはサンフランシスコ郡刑務所などで創作を教える。
1994年、コロラド大学の客員教授となり、後に准教授になった。
2000年に大学をリタイヤし、翌年息子たちの住むロサンジェルスに移住した。
2004年、ガンのために死去した。

<感想>
ルシア・ベルリンの小説は、ほぼ全てが自分の紆余曲折の多い実人生に材を採っているそうだ。そのせいか、どうしても著者の人生と重ねて読んでしまう。
キャラクターは個性的だし、ユーモアとシリアスが混在しているような、簡潔な文章に魅了された。凄く読み易い。
そして、「ドクターH.A.モイニハン」には戦慄した。住人が死んだ家の片付けをする「喪の仕事」は良い話だな。
当時の時代背景や風潮などが相まって、とても面白い短編集だと思う。
満足度 4.gif



人気ブログランキング
『ペンギンの憂鬱』  『シャギー・ベイン』
   


人気ブログランキング
posted by ももた at 09:13| 東京 ☁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。