笹本稜平 著
<あらすじ>
神奈川県警瀬谷警察署に勤務する刑事・宮野裕之は、見当たり捜査には自信があった。非番の日、川崎競馬場から帰宅途中の電車内で気になる顔を見つけ、横浜で下車した男の後を追う。
男は12年前、東京都内の富豪一家3人を奥多摩町の山荘で惨殺し、20億円を上回る巨額の資金とともに国外逃亡した木津芳樹だった。当時メガバンクの行員だった木津は、現在国際指名手配されている。巨額な資金の行方は追跡できなかった。
宮野は、法の埒外で巨悪を追及してきたタクスフォース向きの事案だと睨み、木津が借りているマンスリーマンションを突き止めた後、その主要メンバーであり、警視庁捜査一課で迷宮入り事件の継続捜査を担当する鷺沼友哉に連絡した。
かくして、タクスフォースの異名を持つイレギュラー捜査専業のスカンクワーク集団は、捜査に乗り出すが・・・
<感想>
タクスフォースのメンバーは、かつて殺人班に所属していた鷺沼、その同僚・井上拓海巡査部長、彼らの上司で反骨精神のある古狸・三好章、井上と将来を誓い合っている警視庁碑文谷署の山中彩香巡査、元横浜の暴力団幹部でイタリアンレストランチェーン経営者・福富憲一、そして天賦の才の料理の腕で彼らの舌と胃袋を味方につけている鼻つまみ者の不良刑事・宮野。鷺沼の自宅マンションがタクスフォースの臨時本部だ。
「ノーマルな警察の捜査では追及しきれない巨悪の絡む事案を手掛けた結果、行き場のなくなった裏の金を手に入れた」には、職権を悪用して恐喝する犯罪者集団、悪徳警官に思え、少し引いてしまった。だが、経済的制裁の恩恵目当てで捜査するその人間模様は愉快で楽しい。
そして、そんな彼らの行く手を阻むのは、個人情報保護法、本人確認法、税務署の守秘義務などの法律の問題と、それを盾にする悪党の悪知恵だった。批判を誹謗中傷とすり替える社会だもの、皮肉が効いているな。
地道な捜査とハイテク捜査など、謎解きミステリとしての骨組みがしっかりしているから、少々脱線しても許容範囲内かな。
一家惨殺事件と巨額横領事件を描いた、とても面白い警察ミステリだと思う。

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