エイドリアン・マッキンティ 著
武藤陽生 訳 「Police at The Station and They Don’t Look Friendly」
<あらすじ>
1988年、キャリックファーガスのプロテスタント系団地サニーランズ。麻薬密売人フランシス・ドーヴィルが、クロスボウで殺される事件が発生した。その直前、麻薬密売人イヴァン・モリソンも、フランシスと同様にクロスボウの矢で背中を撃たれたが、生きていた。
しかし、モリソンは何も喋らない。そしてジョン・マクラバン(クラビー)巡査部長が、フランシスのブルガリア人の若い妻エレナにフォークで刺された。
その頃、ショーン・ダフィ警部補は休暇中だった。プロテスタントで、英語しか話せず、裕福で若い恋人エリザベス(ベス)・マカルーと、彼女との間に生まれた6ヶ月の娘エマを連れて、ドニゴール州グレンコロンブキル近郊にある両親のコテージを訪れていた。そこへクラビーから電話があり、ショーンは犯行現場へ駆けつける。
ダフィの情報屋アンディ・ヤングによると、ドーヴィルはどこにも属さない一匹狼の売人だった。みかじめ料を払っており、地元の武装組織は無関係だった。ダブリン駐在のブルガリア領事ピイター・ヤヴァロフが通訳を務め、エレナの事情聴取をするが、手掛かりは無かった。
ところが、ドーヴィルの麻薬の隠し場所を突き止め、大量のドラッグを発見した。そして事件当夜、ドーヴィルはパブで年配の男と会っていた。麻薬取締班のオドリスコル警部がエレナを逮捕するが、彼女は保釈金を払って行方不明になる。
その後、ヤヴァロフから情報提供があり、事件当夜、ドーヴィル夫妻はデリー市議会議員ハロルド・セルデンの車に尾行されていた。
しかし、彼にはアリバイがあった。ダフィは殺人事件と失踪事件の捜査を進め、ドーヴィルとセルデンの共通点を見つける。その直後、古典的なハニートラップに引っ掛かり、IRA(アイルランド共和軍)の現役実行部隊に拉致された。
カソリックの警察官、ショーン・ダフィの身に危険が迫っていた・・・
<感想>
プロローグは処刑される寸前のダフィを描いており、その衝撃的な幕開けで一気に話に引き込まれた。
1950年生まれのショーン・ダフィは38歳。シリーズ開始時は孤独な一匹狼的要素が強く、北アイルランド紛争(トラブルズ)という背景も相まって、異彩を放っていた。それが本書では喘息を患い、若い恋人のご機嫌取りをし、育児にも積極的に参加している。少し違和感を覚えたが、優秀な刑事であることに変わりはない。捜査中は骨のあるところを見せている。
そしてダフィの家族のエピソード、恋人ベスとの関係、クラビーや若きローソンとのやり取り、警察の人間模様などをユーモラスに描き、楽しく読ませる。
また中盤以降は、警察の特別部内部調査班とIRA、2方向から攻撃されるダフィ、そして生き残りを懸けて悪の根源に戦いを挑むダフィとその仲間たちを描いており、圧倒された。ダフィとクラビーとローソン、この3人は本当に良いチームになったな。凄く面白い警察ミステリだと思う。
7作目『The Detective Up Late』と8作目『Hang on St.Christopher』が待ち遠しくてならない。

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