2022年08月08日

潔白の法則

ミッキー・ハラー(リンカーン弁護士)シリーズ E
マイクル・コナリー 著
古沢嘉通 訳 「The law of Innocence」

<あらすじ>
刑事弁護士ミッキー・ハラーの車のトランクから義捐金詐欺師サム・スケールズの遺体が見つかり、彼は殺人容疑で逮捕された。
自分の未来を他人の手に委ねることはできないと思ったハラーは、自分自身を弁護する本人訴訟に臨む。共同弁護人は、ハラーの事務所のパートナーであるジェニファー・アーロンスン。弁護側の作戦司令室は、ツイン・タワーズ矯正施設隔離房舎の13号独房。ハラーを有罪にして刑務所送りにするため任命されたのは、スター検察官ダナ・バーグだった。
そしてハラーを恨み、殺人事件の濡れ衣を着せる動機と手段を持っている者として浮かび上がったのは、犯罪組織と合法ビジネスの二股をかけているルイス・オパリジオだけだった。
ハラーの潔白を明らかにすべく、異母兄で元ロス市警刑事ハリー・ボッシュも弁護士チームに加わる。無罪を勝ち取るため、チームが一丸となって真犯人を追う・・・

<感想>
リンカーン弁護士ミッキー・ハラーの奮闘を描いており、読み出したら止められない。
ハラーの法廷戦略、弁護側と検察側と判事の間で繰り広げられる法廷劇などが相まって、凄く面白いミステリだと思う。
しかし、すっきりしない決着だったな。
満足度 4.gif


posted by ももた at 09:44| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月04日

嵐の地平

ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ N
C・J・ボックス 著
野口百合子 訳 「ENDANGERED」

<あらすじ>
ジョー・ピケットの養女エイプリルが頭を殴打され、瀕死の状態で道端に放置された。
エイプリルは昨年、少女暴行事件に関与した疑いのあるロデオ・カウボーイのダラス・ケイツと駆け落ちしていた。ジョーは彼の仕業ではないかと睨む。
しかしダラスの両親によれば、彼はロデオ大会で大怪我をして、エイプリル発見の数日前に実家に戻って静養していた。エイプリルとはその前に別れており、事件とは無関係だと主張する。
一方ジョーの担当地区では、絶滅の危機にあるキジオライチョウ大量殺戮事件が起きていた。その調査のため、連邦政府が組織した特別調査団のアニー・ハッチとリーヴィス・ウェントワースがやって来た。
やがて、愛国者でサバイバリストを自称するカドモアの家と車からエイプリルの持ち物が見つかり、リード保安官は彼を逮捕した。
そんな中、FBIに囚われていたジョーの盟友で鷹匠のネイト・ロマノウスキが、条件付きで釈放された。ネットワークに監視される社会に戻ったネイトは、恋人オリヴィア・ブラナンと一緒にタカ狩りサービス業を始める。
メールでムクドリ退治の依頼が来て牧場へ行ったところ、ネイトは待ち伏せ攻撃に遭い、危篤状態でエイプリルと同じ病院に搬送された。オリヴィアは襲撃者たちに連れ去られた。そしてカドモアが、独房で首を吊った。
しかしジョーは、ケイツ一家に対する疑惑を拭い切れなかった・・・

<感想>
エイプリル暴行事件とネイト襲撃事件、そしてキジオライチョウ大量殺戮事件を描いており、ワイオミング州の大自然や風土、FBIと連邦政府職員の思惑などが相まって、凄く面白いミステリだと思う。
それにしてもネイト・ロマノウスキは、何とタフな男なのだろう。
灼熱の砂漠を舞台にした16作目のアクション巨編『Off the Grid』が楽しみでならない。
満足度 5.gif

posted by ももた at 09:03| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月02日

ポリス・アット・ザ・ステーション

刑事ショーン・ダフィ・シリーズ E
エイドリアン・マッキンティ 著
武藤陽生 訳 「Police at The Station and They Don’t Look Friendly」

<あらすじ>
1988年、キャリックファーガスのプロテスタント系団地サニーランズ。麻薬密売人フランシス・ドーヴィルが、クロスボウで殺される事件が発生した。その直前、麻薬密売人イヴァン・モリソンも、フランシスと同様にクロスボウの矢で背中を撃たれたが、生きていた。
しかし、モリソンは何も喋らない。そしてジョン・マクラバン(クラビー)巡査部長が、フランシスのブルガリア人の若い妻エレナにフォークで刺された。
その頃、ショーン・ダフィ警部補は休暇中だった。プロテスタントで、英語しか話せず、裕福で若い恋人エリザベス(ベス)・マカルーと、彼女との間に生まれた6ヶ月の娘エマを連れて、ドニゴール州グレンコロンブキル近郊にある両親のコテージを訪れていた。そこへクラビーから電話があり、ショーンは犯行現場へ駆けつける。
ダフィの情報屋アンディ・ヤングによると、ドーヴィルはどこにも属さない一匹狼の売人だった。みかじめ料を払っており、地元の武装組織は無関係だった。ダブリン駐在のブルガリア領事ピイター・ヤヴァロフが通訳を務め、エレナの事情聴取をするが、手掛かりは無かった。
ところが、ドーヴィルの麻薬の隠し場所を突き止め、大量のドラッグを発見した。そして事件当夜、ドーヴィルはパブで年配の男と会っていた。麻薬取締班のオドリスコル警部がエレナを逮捕するが、彼女は保釈金を払って行方不明になる。
その後、ヤヴァロフから情報提供があり、事件当夜、ドーヴィル夫妻はデリー市議会議員ハロルド・セルデンの車に尾行されていた。
しかし、彼にはアリバイがあった。ダフィは殺人事件と失踪事件の捜査を進め、ドーヴィルとセルデンの共通点を見つける。その直後、古典的なハニートラップに引っ掛かり、IRA(アイルランド共和軍)の現役実行部隊に拉致された。
カソリックの警察官、ショーン・ダフィの身に危険が迫っていた・・・

<感想>
プロローグは処刑される寸前のダフィを描いており、その衝撃的な幕開けで一気に話に引き込まれた。
1950年生まれのショーン・ダフィは38歳。シリーズ開始時は孤独な一匹狼的要素が強く、北アイルランド紛争(トラブルズ)という背景も相まって、異彩を放っていた。それが本書では喘息を患い、若い恋人のご機嫌取りをし、育児にも積極的に参加している。少し違和感を覚えたが、優秀な刑事であることに変わりはない。捜査中は骨のあるところを見せている。
そしてダフィの家族のエピソード、恋人ベスとの関係、クラビーや若きローソンとのやり取り、警察の人間模様などをユーモラスに描き、楽しく読ませる。
また中盤以降は、警察の特別部内部調査班とIRA、2方向から攻撃されるダフィ、そして生き残りを懸けて悪の根源に戦いを挑むダフィとその仲間たちを描いており、圧倒された。ダフィとクラビーとローソン、この3人は本当に良いチームになったな。凄く面白い警察ミステリだと思う。
7作目『The Detective Up Late』と8作目『Hang on St.Christopher』が待ち遠しくてならない。
満足度 5.gif



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posted by ももた at 08:45| 東京 ☁| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。