装画 坂月さかな
<内容>
「南の十字に会いに行く」「星は、すばる」「箱庭に降る星は」「木星荘のヴィーナス」「孤舟よ星の海を征け」「星の子」「リフトオフ」を収録した連作短編集。
<感想>
宇宙と星をテーマにした、感動的な連作短編集だと思う。
「南の十字に会いに行く」の舞台は石垣島。主人公は父親・北斗とふたりきりで暮らす、もうじき中学生の七星と言う名前の女の子。母親は、宇宙飛行士を目指してNASAで訓練中。天文学者である祖母に会うため、石垣島へやって来た。観光と再会を描いた、楽しい話だと思う。
「星は、すばる」は、小学4年生とき右目を怪我して両目とも視力が低下してしまった女の子・美星が主人公。彼女の夢は、夏休みの星空観測会で出会った美少年と一緒に、宇宙飛行士になること。その子供のポジティブさが眩しい。そして、生まれつき片方の目だけが極端に悪い「不同視弱視」を知った。とても良いお話だと思う。
「箱庭に降る星は」の舞台は、山に囲まれた田舎町の高校。部員不足で廃部寸前のオカルト研究会と天文部と文芸部が、生徒副会長のアイデアで強引にまとめられ、彼女も一時的に入部してスぺミス部として発足した。そのメンバーの秘密裏の活動を描いており、爽快な青春ミステリだと思う。
「木星荘のヴィーナス」は、木星荘の住人である金江さんを巡る素敵な話。
「孤舟よ星の海を征け」は、宇宙旅行中の巨大宇宙船のなかで幕が開く、母親の角膜を移植した少年・海斗の感動的な話。
「星の子」と「リフトオフ」は、「南の十字に会いに行く」の続編。「星の子」は、特殊な親を持った女子中学生の友情を描いている。そして「リフトオフ」には、これまでの登場人物が勢揃いし、意外な相関図が完成する。種明かし編になるのかな。最終編らしく、上手く纏まっていると思う。

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