サーシャ・フィリペンコ 著
奈倉有里 訳
装画 出口えり
<あらすじ>
1995年の国民投票以降、街なかでの暴力事件の件数は、うなぎ登りに伸びていた。
5月のある夜、運動公園で催されていたお祭りの大規模イベントが終わる頃、天気が急変した。人々は大雨を避けようと地下鉄の入口に殺到し、パニック状態になった。将棋倒しとなり、大規模な群集圧迫事故が発生、多数の死傷者が出た。
国立の音楽専門学校に通う16歳の少年フランツィスク・ルーキチもこの大惨事に巻き込まれ、昏睡状態に陥った。
その後、植物状態となり、誰もが快復を諦める中、著名な翻訳家でもある祖母エリヴィーラだけは最良の結末を信じ、病室に通い続けた。その間、フランツィスクの母親は、息子の主治医と結婚して男の子を産んだ。
10年後の2009年、余生を孫に捧げてきた祖母が亡くなった。その2日後、ツィスクは奇跡的に目覚めた。
生還したツィスクは、信じられないスピードで快復していく。そして、時間制限付きのWi-Fi、嘘を吐く国営放送、セックス・ツーリズムなど、国の現状に戸惑う。
若者の間では、事実しか話せない「理不尽ゲーム」と言う遊びが流行っていた・・・
<感想>
ロシア政府に依存するベラルーシは、欧州最後の独裁者と呼ばれるルカシェンコ大統領の28年に亘る支配下にある。その内実を政治と無関係な市民の視点で描いており、興味深く勉強になった。
そして、独裁国家の恐ろしさが身に染みた。ソ連崩壊後に独立を果たしても、兄たる国(ロシア)の支配下から逃れるのは至難の業なのだな。考えさせられた。

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