2022年05月30日

残照の頂 続・山女日記

湊かなえ 著
装画・挿絵 牧野千穂

<内容>
「後立山連峰 五竜岳・鹿島槍ヶ岳(富山県・長野県)」
「北アルプス表銀座縦走路 燕岳・大天井岳・西岳・槍ヶ岳(長野県)」
「立山・剱岳(富山県)」
「武奈ヶ岳(滋賀県)・安達太良山(福島県)」

<感想>
サブタイトルが「続・山女日記」だったので、エッセイだと思っていたら、登山を描いた短編集だった。
「後立山連峰」は、夫の遺志を継ぎ山小屋風喫茶店を営む51歳の女性と、大学時代に山岳部だった45歳の女性のガイド登山。
「北アルプス表銀座縦走路」は、北アルプス三大急登に挑む音大生2人の大切なミッション。
「立山・剱岳」は、山岳ガイドになりたいと打ち明けた途端、半年間絶縁状態が続いている仲良し母娘の話。
「武奈ヶ岳・安達太良山」は書簡形式になっており、大学卒業後に疎遠になった登山仲間が、30年ぶりに単独登山をして人生を振り返る話。
小さな謎と人生ドラマ、登山描写などが相俟って感動的な山岳小説だと思う。
そして、頑張って生きなくてはと思った。登山が無理でもハイキングに行きたくなったな。
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2022年05月27日

フォンターネ 山小屋の生活

パオロ・コニェッティ 著
関口英子 訳 「IL RAGAZZO SELVATICO」

<内容>
第1章 冬 眠りの季節/街で」
第2章 春 孤独と観察の季節/家/地形図/名残り雪/畑/夜/隣人」
第3章 夏 友情と冒険の季節/牛飼いよ、どこへ行く/干し草/アイベックス/野宿/登山小屋/格別な一本/むせび泣き」
第4章 秋 執筆の季節/山小屋に戻る/言葉/来訪者/幸運な犬/牧下り/銀世界で/最後のワイン」

<感想>
著者は30歳のとき、エネルギーが枯渇し、途方に暮れ、自信を失い、生まれてこのかた経験したことのない虚無感に襲われ、何も書けなくなった。そこで、野生の少年だった頃の自分を探しに行こうと、標高1900mに建つ、材木と石でできたアルプスの山小屋に籠った。その体験が、世界的ベストセラー『帰れない山』に繋がって行く。
完全な闇と耳が痛くなるほど深い静寂、寂寥感と孤独感、隠遁者のような生活、大自然と土地の歴史を読み解く探査のような散策、森の野生動物と牧羊犬、山の師匠のエピソード等々、とても興味深く勉強になった。
そして、人間関係が煩わしくて山小屋に籠ったのに、結局は人恋しくなって、無骨で寡黙な山の男たちと親交を深めて行くのは面白いな。山とか森林、大自然には人の心を癒す力があると再確認できる、とても面白い体験記だと思う。
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posted by ももた at 09:05| 東京 ☔| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月25日

この道の先に、いつもの赤毛

アン・タイラー 著
小川高義 訳 「Redhead by the Side of the Road」
装画 カシワイ

<あらすじ>
アメリカのメリーランド州ボルティモア郊外。アパートの地階にひとりで住む43歳のマイカ・モーティマーは、朝のランニング、シャワー、朝食、曜日毎にローティションの掃除という決まった日課を守り、アパートの管理人の仕事とコンピューターの技術サービスの自営業をして平穏に暮らしていた。
30代後半の小学校の教師キャシア(キャス)・スレイドと3年ほど付き合っているが、男友達はいない。
そんなある日、朝のランニングから戻ると、18歳の若者ブリンク・バーテル・アダムスが彼を待っていた。ブリンクは大学時代の恋人ローナ・バーテルの息子で、マイカを実の父親だと思っていた。
しかし、マイカとローナは身体の関係なんてなかった。それに会わなくなって20年以上も経っていた。大学を飛び出し家出してきたブリンクを、客用の部屋に泊めた。
翌日、キャスから別れを告げられ、マイカは衝撃を喰らう。予想外の出来事が続き、静寂を好むマイカの決まりきった日常がズレ始める・・・

<感想>
少しクセのある主人公の暮らしぶりを中心に、アパートの住人や顧客、マイカの身内と恋人、ブリンクの家族など、マイカに関わる人々のエピソードをユーモラスな筆致で描いており、多彩でユニークな脇役とテンポの良い会話が相俟って凄く愉しい。
人付き合いが苦手でちょっと変わり者だけど、誰の世話にもならず、どこからの施しも受けることなく、しっかり働いて、ちゃんと稼いでいることを、正当に評価する人がいて嬉しくなる。
全ての登場人物に対する愛情が感じられて心が温かくなる。
そして最後は、素敵なラブストーリーになっている。この作家さんは本当に巧いなぁ。
全文に優しさが溢れており、味わい深く、読後感がとても良い素敵な小説だと思う。
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posted by ももた at 09:14| 東京 ☀| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。