2022年03月29日

水を光に変えた男 動く経営者、福沢桃介

荻野進介 著
装画 コバヤシヨシノリ

<内容>
明治・大正期の実業家で電力王と呼ばれた、福沢諭吉の娘婿・福沢桃介(1868年8月13日〜1938年 2月15日)の生涯を描いた伝記小説。

<あらすじ>
明治元年に埼玉(現在の比企郡吉見町)の貧農の次男として生まれた岩崎桃介は、子供の頃、億万長者になろうと心に誓った。
16歳のとき、知り合いの口利きで慶応義塾に入り、寄宿舎の住人となった。
18歳のとき、洋行を条件に福沢諭吉の娘婿となる。
念願の米国留学を果たし、北炭鉄道に就職。全ては順調にいくかと思いきや、26歳のとき肺結核に罹り、長期入院を与儀なくされる。入院中に株を覚え、大金持ちになる。その金を元手にロシア相手の貿易会社をつくるが、義父である諭吉の裏切りに遭い、会社を畳む。諭吉の死後、株式相場に嵌まり、兜町の飛将軍となる。
不惑を迎え、相場師という職業に嫌気がさし、世間から感謝される事業をやってみたくなる。この世に生きた証しを残すべく、電力事業に乗り出すが・・・

<感想>
福沢桃介は金持ちになる夢を実現し、「たとえ自分が死んでも、その事業が潰れずに続いて行けば、永遠の命を貰ったもの」と言い、木曽川を堰き止めて大井ダムを造った。
厳しい競争社会で生き残るための試練と挫折、強い意志と自分が置かれた環境やチャンスをものにする状況判断、お金と人脈の使い方や作り方など、明治・大正期の日本男児は凄いと思った。なんかもう、圧倒されたな。
満足度 4.gif


posted by ももた at 08:53| 東京 ☁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月24日

サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する

梯久美子 著
地図 本島一宏 
写真 悌久美子 
イラスト 柳智之

<内容>
第1部 寝台急行、北へ 1.歴史の地層の上を走る/2.林芙美子の樺太/3.ツンドラ饅頭とロシアパン/4.国境を越えた恋人たち/5.北緯50度線の向う/6.廃線探索と鉱山王/7.ニブフの口琴に揺られて」

第2部 「賢治の樺太」をゆく 1.「ヒロヒト岬」から廃工場へ/2.賢治が乗った泊栄線/3.「青森挽歌」の謎/4.移動する文学/5.大日本帝国、最果ての駅へ/6.オホーツクの浜辺で/7.チェーホフのサハリン、賢治の樺太/8.白鳥湖の謎/9.光の中を走る汽車/10.すきとおったサガレンの夏」

<感想>
何度も国境線が引き直された島、樺太/サハリンは北海道とほぼ同じ大きさであり、現在はロシア国防上の重要地帯となっているそうだ。旧樺太の土地には先住民であるアイヌの人が呼んでいた地名を含め、4つの地名を持つ場所もあるらしい。ふたつの帝国の領土争いに翻弄された歴史はとても興味深く、勉強になった。
第1部は、2017年11月の鉄道旅。第2部はその翌年の9月、宮沢賢治の足跡を辿る取材旅行。
著者は鉄道ファンにして、廃線探索も趣味としているそうだ。その趣向がそこかしこに散見され、楽しい鉄道旅になっていると思う。
そして、林芙美子と北原白秋、宮沢賢治の樺太の旅など、歴史の重みを感じつつ、旅情も誘われる。想像以上に読み応えがあり、面白い旅行記だったな。
満足度 5.gif


posted by ももた at 08:33| 東京 🌁| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月22日

失われた岬

篠田節子 著
装画 吉實恵

<あらすじ>
2007年冬、北海道の新小牛田町に転居した栂原夫妻が失踪した。
夫婦ぐるみで親交のあった、子供のいない40代の主婦・松浦美都子は、栂原夫妻のひとり娘・愛子から連絡を受け、現地へ向かう。
愛子によれば、信州に住んでいたとき、母親・清花は東京からの移住組である財閥系企業の社長令嬢・桐ケ谷肇子に共感するようになり、変貌していた。昨年のクリスマス前に、「肇子に連れて来られて、自分のいる場所を見つけた」という主旨の絵手紙を留学中の愛子に送っていた。
翌日、美都子の夫・和宏も東京からやって来て、栂原夫妻のことを近所で尋ねると、父親・亮介が「カムイヌフ岬に行く」というメッセージを残していた。
カムイヌフ岬は人の立ち入りを拒む険しい場所で、以前に東京の大学の探検部が入り口付近で断念していた。肇子を追って東京から来た若手起業家・岡村陽は自力で戻ってきたが、ヒグマに襲われて重傷を負った。
愛子たちは警察署まで出向き捜索を頼むが、何も発見できなかった。春になって亮介の凍死体が見つかるも、清花の遺体は見つかっていない。
2029年、ノーベル文学賞を受賞した日本人作家・一ノ瀬和紀が、授賞式前日にストックホルムで失踪した。一ノ瀬は、「もうひとつの世界に入る」という書置きを残していた。
担当編集者である相沢礼治は、一ノ瀬の足取りを追う。やがて、北海道のカムイヌフ岬に辿りつくが・・・

<感想>
かなり分厚い本だけど、現実にあった事件や社会問題などを織り込み、アイヌの聖地とか戦時中の毒ガス工場と噂されている岬の謎、神秘的で超常現象めいたエピソード、薬物依存症の特効薬、薬用植物と創薬と奇跡の薬の副作用、日本の近未来予想などが相俟って面白く読ませる。
「非同盟中立国であるスウェーデンも、その平和を維持しているものは鉄壁の軍備だ。」という一文にハッとさせられた。
しかし読み進むに連れ、日本国の有り様に警鐘を鳴らす力作なのは分かるけれど、日本近代史の暗部や社会問題を詰め込み過ぎて、ありきたりな話に納まってしまったな。どこかで見聞きしたことの寄せ集めみたいだと思った。
満足度 4.gif


posted by ももた at 09:40| 東京 🌁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。