2022年02月28日

責任 ラバウルの将軍今村均

角田房子 著
装画 渡辺章人

<内容>
ラバウル戦犯収容所 今村大将、自決をはかる/迷える子羊のために/戦犯の慈父/キリスト教徒片山海軍大尉/さらばラバウルよ/今村大将の責任裁判/島民虐殺事件/安達第十八軍司令官の自決/処刑前夜は満月だった」

太平洋戦争勃発まで 均少年と角兵衛獅子/結婚/満州事変から二・二六事件へ/関東軍参謀副長以後/第五師団長―南寧の激戦」

太平洋戦争開戦 ジャワ攻略戦―重油の海の立ち泳ぎ/全蘭印軍無条件降伏/ラべウルへ/ガダルカナルの責任者は誰か/現地自活計画/海の輸送路を断たれる/草むす地下要塞/ズンゲン守備隊玉砕の真相/戦い終わる」

ジャワ裁判始まる 獄中の「八重汐」大合唱/裁判に立ち向かう気魄/キリストと親鸞/マヌス島からの便り/自ら志願してマヌスの獄へ」

晩年 帰国、出獄、そして自己幽閉/舞中将の述壊」

<感想>
自己の課した責任の重みに耐えて生き抜いた陸軍大将今村均(1886年6月28日〜1968年10月4日)の生涯を、元軍人の証言や獄中日記、回想録、数々の資料を基に綴っており、太平洋戦争戦記、報復と杜撰な戦犯裁判、帝国陸軍軍人の本分、軍人を縛る命令絶対服従の掟や慣習、玉砕と将校の死生観、飢餓地獄、敗戦の前途を見通していた今村の心境とその変化や罪悪感等々、読み応えがあった。
航空兵力も船もない圧倒的に不利な戦局で物量を誇る連合軍と死闘を繰り広げ、運良く生き残っても、無実の身でありながら死刑を宣告された軍人たちが、処刑直前の石牢に書き残した壁文字は、胸に迫るものがある。負け戦の責任をとらされたのは、日本を守るために命懸けで戦った彼等だったんだな。
それなのに終戦後、軍人たちは、進駐軍が流布した「この戦争は、日本軍閥の不法な侵略企図によって起きた」という宣伝に同調した国民から非難された。考えさせられるな。
そして出獄した今村は、「米国への依存を期待すべきではない。国防のための再軍備は絶対に必要。日本は外国の援助を受けずに自らを護ることはできないので、自由主義諸国と固く手を握るべきである。」と語っていたそうだ。
侵略戦争など過去のことと思っていたが、ロシアの暴挙や中国の遣り様を見ると恐ろしくなる。コロナで世界が分断されて、経済も悪化している時なのに、独裁国家のやることは本当に怖いな。
満足度 5.gif


posted by ももた at 09:47| 東京 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月24日

やさしい猫

中島京子 著
装画 西山竜平

<あらすじ>
シングルマザーの保育士・首藤ミユキは、小学3年生のひとり娘マヤを実母に預け、東日本大震災のボランティアに行き、23歳のスリランカ出身の自動車整備士・クマラと知り合う。
1年後、2人は駅前の路地で奇跡的な再会を果たした。このときミユキは32歳、夫を亡くして6年経っていた。
2人が交際を始めて3か月後、クマラとマヤは初めて会う。母娘とクマラは順調に親交を深めて行く。
マヤが小学6年生とき母親が職場で倒れ、緊急入院した。その間、クマラは親身になってマヤの面倒を見た。退院後、クマラが母娘のアパートに移り住み、ミユキは仕事を辞めて治療に専念する。
マヤが中学生になり、ミユキは夜間保育の仕事を見つけて復帰した。その後、ミユキはクマラの3回目のプロポーズを快諾し、2人は婚約した。
しかし、クマラが仕事をクビになり、それを隠して結婚を延期したことでミユキは不信感を抱く。2人は別居状態となり、ミユキが彼をかけがえのない存在と気付いたときには、クマラの残留カードは期限切れになっていた・・・

<感想>
残留資格と就労制限、配偶者ビザと残留特別許可、出入国在留管理庁の施設収容期限が定められていない、オーバースティの両親から生まれた子供は非正規滞在者、退去強制の決定となった場合は出国した日から5年間入国禁止、いくつもある在留管理制度、スリランカの初代大統領ジャヤワルダナ(1951年のサンフランシスコ講和会議で日本を擁護する演説をした。)のエピソード等々、勉強になった。
善良な人でも不法滞在者になってしまう過程を優しい筆致で描いており、考えさせられた。
マヤと関わる2人の少年も問題を抱えており、そのエピソードなどが相俟って、感動的な家族小説だと思う。
でも、好きになった人とずっと一緒にいたいと願う、当たり前の幸せが奪われたのは、彼がスリランカ出身の外国人だったからではないな。日本の法律を破ったからだと思う。
オーバースティという単語を使って印象操作をしても、不法滞在であることに変わりはない。役人の裁量でケースバイケースになったら、公正性を保つのが難しくなる。彼らはスマホを持っているのだから、いろいろ調べられたと思うな。ルールを軽視して、自分たちの無知も棚上げにして、同情を買うのはちょっと違うかな。
満足度 5.gif


posted by ももた at 08:40| 東京 ☁| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月21日

濁り水

消防士大山雄大・Fire's Outシリーズ  C
日明恩 著

<あらすじ>
1年前の9月、大山雄大は葛飾区上平井出張所の特別消火中隊(高度な知識と技能を兼ね備えた隊員で構成され、最新鋭の資機材を駆使して火災に立ち向かう消防に特化した部隊)に異動した。
観測史上2番目の台風が関東に上陸し、猛威を振るい続ける中、80代の女性が冠水した駐車場で車の下に入り外に出られないとの救助要請があり、雄大たち上平井ポンプ隊は現場に急行する。
しかし現着時、既に敷島芙巳子は亡くなっていた。雄大たちは、芙巳子と同居する長女・八重子から「どうしてもっと早く来なかったのよ!どうして助けてくれなかったの?」と詰られる。
その2日後、この件で刑事が話を聞きたいと上平井出張所にやって来たが、検死の結果、水死と判断された。雄大たちは救出できなかったことを無念に思っていた。
そうした中、雄大は、台風の日に助けた喪服姿の老人から謎の言葉を告げられる。雄大の幼馴染みであり、地元の武本工務店に勤務する裕二のおかげで騙されずに済んだ芙巳子は、悪徳リフォーム詐欺を警察に通報していた。
折しも水害エリアで、エアコンの室外機が火元のボヤと、床下換気扇が火点の火災があった。リフォーム詐欺犯が狙うのは冠水の被災地、雄大の管区だ。
そこで雄大と裕二は、情報がないと生きていけないタイプである引き籠りの友人・楠目守と共に、2人組のリフォーム詐欺犯を捕まえるべく動き出す・・・

<感想>
日常業務と出場演習と想定訓練、水利調査、防火防災の指導、消火と人命救助、災害救助活動など、消防官の仕事を描きつつ、雄大たちはリフォーム詐欺犯を追い詰めて行き、老女水死の真相を暴く。
絶対に公言できない消防官の本音、エアコンの室外機の豆知識、床下換気扇の種類と木造建築火災、消防水利施設の配置の決まり、被災地工務店詐欺、悪徳リフォーム詐欺の手口等々、勉強になった。
雄大たち男3人の友情と泥棒を生業とする老人のエピソードが相俟って、とても面白いお仕事ミステリだと思う。
満足度 4.gif

<消防士大山雄大・Fire's Outシリーズ作品リスト>
@『鎮火報』 A『埋み火』 B『啓火心』 C『濁り水』


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posted by ももた at 08:51| 東京 ☀| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
読んだ本の紹介と感想、評価を書きました。