装画 渡辺章人
<内容>
「ラバウル戦犯収容所 今村大将、自決をはかる/迷える子羊のために/戦犯の慈父/キリスト教徒片山海軍大尉/さらばラバウルよ/今村大将の責任裁判/島民虐殺事件/安達第十八軍司令官の自決/処刑前夜は満月だった」
「太平洋戦争勃発まで 均少年と角兵衛獅子/結婚/満州事変から二・二六事件へ/関東軍参謀副長以後/第五師団長―南寧の激戦」
「太平洋戦争開戦 ジャワ攻略戦―重油の海の立ち泳ぎ/全蘭印軍無条件降伏/ラべウルへ/ガダルカナルの責任者は誰か/現地自活計画/海の輸送路を断たれる/草むす地下要塞/ズンゲン守備隊玉砕の真相/戦い終わる」
「ジャワ裁判始まる 獄中の「八重汐」大合唱/裁判に立ち向かう気魄/キリストと親鸞/マヌス島からの便り/自ら志願してマヌスの獄へ」
「晩年 帰国、出獄、そして自己幽閉/舞中将の述壊」
<感想>
自己の課した責任の重みに耐えて生き抜いた陸軍大将今村均(1886年6月28日〜1968年10月4日)の生涯を、元軍人の証言や獄中日記、回想録、数々の資料を基に綴っており、太平洋戦争戦記、報復と杜撰な戦犯裁判、帝国陸軍軍人の本分、軍人を縛る命令絶対服従の掟や慣習、玉砕と将校の死生観、飢餓地獄、敗戦の前途を見通していた今村の心境とその変化や罪悪感等々、読み応えがあった。
航空兵力も船もない圧倒的に不利な戦局で物量を誇る連合軍と死闘を繰り広げ、運良く生き残っても、無実の身でありながら死刑を宣告された軍人たちが、処刑直前の石牢に書き残した壁文字は、胸に迫るものがある。負け戦の責任をとらされたのは、日本を守るために命懸けで戦った彼等だったんだな。
それなのに終戦後、軍人たちは、進駐軍が流布した「この戦争は、日本軍閥の不法な侵略企図によって起きた」という宣伝に同調した国民から非難された。考えさせられるな。
そして出獄した今村は、「米国への依存を期待すべきではない。国防のための再軍備は絶対に必要。日本は外国の援助を受けずに自らを護ることはできないので、自由主義諸国と固く手を握るべきである。」と語っていたそうだ。
侵略戦争など過去のことと思っていたが、ロシアの暴挙や中国の遣り様を見ると恐ろしくなる。コロナで世界が分断されて、経済も悪化している時なのに、独裁国家のやることは本当に怖いな。