装画 フランシスコ・ゴヤ「砂に埋もれる犬」部分
<あらすじ>
小森優真はこれまで母親の男たちに虐待され、苦しめられてきた。男の稼ぎや住まいに依存して暮らしている母親も、優真を大事にしてくれない。父親の違う4歳の弟・篤人でさえ、優真の言うことを聞かなかった。
小学4年生のとき、同級生のスイッチを盗んだことで不登校になった優真は、日々の食事もままならないうえ、どこにも行く当てがなく、街を彷徨っていた。
そんなある日、腹を空かせた優真は、コンビニ店主の目加田に廃棄弁当を貰えないかと頼む。
生まれて初めて、飢えている人を見た目加田は衝撃を受け、無下に断われず弁当をあげる。不憫に思い、何も食べ物がなくなったらまたおいでと言ってしまう。
数日後、優真が虐待の刻印のような青痣を作ってコンビニに来たため、目加田は警察に通報する。優真の母親は、篤人を連れて消えた。優真は児童相談所の一時保護所に2カ月いて、その後、児童養護施設に入所した。
1年後、中学生になった優真は、養育里親になりたいという目加田夫妻の申し出を受けるが・・・
<感想>
居所不明児童、遺棄児童、ネグレクトの連鎖など、ネグレクトされた子供を描いた、読み応えのある長編小説だと思う。
しかし、話が唐突に終わり、啞然とする。正念場を迎えた目加田夫妻と優真はどうするのかという一番肝心な、知りたかったことが書かれていない。苦々しさとやり切れない気持ちだけが残ったな。