松本剛史 訳 「THE TWELVE LIVES OF SAMUEL HAWLEY」
<あらすじ>
身体に複数の弾傷があるサミュエル・ホーリーは、娘のルーが12歳になったとき、銃の撃ち方を教えた。これまでは同じ場所に居つかず、トラックでアメリカ中を転々としてきたが、娘に普通の暮らしをさせるため、亡き妻リリーの故郷であるマサチューセッツ州のオリンパスに定住することにした。
しかし、リリーの母であるメイベル・リッジは父娘を拒絶する。それでもルーはこの町が気に入り、父娘は海辺の古い屋敷を買った。ホーリーが獲った魚貝を市場で売って生計を立て、ルーは地元の中学に入った。
だが、変わり者の父娘は、町の住人に受け入れてもらえない。間もなくルーはいじめの標的になる。男子3人をぶちのめして大騒動になるが、グンダーソン校長の特別な計らいにより、父娘はオリンパスの伝統行事に参加し、この町の悪意を一掃した。
月日が流れ、成長したルーは母の死について調べ始めた。そして、父の本来の姿を悟る。
そんなとき、ホーリーの仕事仲間であるジョーヴが転がり込んで来た。そしてとうとう、ホーリーの恐れていた過去の因縁が、影みたいに追い着いてきた・・・
<感想>
15歳のときからずっと独りで生きて来たサミュエル・ホーリーが、初めて銃撃されたのは17歳の頃。向う見ずな若い女性リリーと出会ったのは30歳のとき。リリーは父親である酔いどれガスの葬儀の帰りだった。人間は誰もが愛と慰めを求め、愛し愛されたいと願っているのだ。
ホーリーとルーの物語を交互に描き、ホーリーの身体に複数の弾傷がある理由と禍の種、リリーの死の真相、ルーの生い立ちなどが明らかになって行く。父娘が強敵と闘うクライマックスは、最高にスリリングな銃撃戦だった。
犯罪者の恋物語にしてルーの成長物語でもあり、家族を描いた面白い長編小説だと思う。
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