<内容>
「第1章 ソ連参戦 1945年8月9日、新京」
「第2章 1094名の疎開隊 北朝鮮・郭山」
「第3章 足りない食糧」
「第4章 飢餓の冬」
「第5章 死にゆく子どもたち」
「第6章 旧満州への帰還」
「第7章 残された人々 1946年春、郭山」
「第8章 38度線を目指して 決死の脱出行」
「第9章 国共内戦の荒波 1946年、長春」
「第10章 最後の脱出行 1946年9月」
「終章 日本人難民 戦後史の闇」
<感想>
敗戦に伴って満州から北朝鮮に疎開した日本人難民(主に女子供。根こそぎ動員により夫が出征し、疎開隊を引率する男は少数。)の記録である。
本書に登場する井上寅吉と喜代の長女・泰子は、著者の伯母に当たるそうだ。著者が新聞社に入社して5年目、戦後50年に当たる1995年に伯母は、祖母・喜代の手記を下敷きにして『北朝鮮・郭山への墓標』を自費出版した。そして2005年には、著者の父・昌平(当時10歳だった)が一家の引き揚げでの苦闘も含めて自伝『追想のわが来し方』を著した。つまり本書は、敗戦の殺伐とした混乱を生き抜いた著者の家族の歴史でもある訳で、当事者ならではの強い思いれを感じた。
日本政府に見捨てられ、国際社会からも援助を受けることのなかった朝鮮北部の日本人難民の実態を、良くもこれだけ詳細に調べたものだと思う。疎開隊も良くぞその名簿や死亡者名簿、疎開日誌と共同墓地の見取り図などを無事に持ち帰り、大切に保管してくれたものだと思う。証言だけでなく書類があると説得力が違う。胸に迫ってくるものがある。
戦後何年経とうと、シベリア抑留と同じく歴史に埋もれさせてはいけない棄民政策だと思った。読み応えがあったな。
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