吉永南央 著
装画 杉田比呂美
<あらすじ>
独り暮らしの老婆・杉浦草は、北関東の地方都市でコーヒー豆と和食器の専門店「小蔵屋」を営んでいる。
ある日、米沢市の婚家に残し、3歳で水の事故で死んだ息子・良一の名を騙る男が訪ねて来た。草は良一の葬儀に参列することも叶わず、息子のブリキの電車を杉浦家の墓に納めていた。男は婚家で働いていた丹野キクの息子・学として育っていた。呆れた嘘話だと思うものの、男の目的が分からない。
そのうち証拠を見せられ、草はあれこれと思い悩むが・・・
<感想>
杉田比呂美氏の表紙絵に惹かれた。そして老婆が主人公なので、読み始めて直ぐにゆったりとした時の流れを感じる。和食器の蘊蓄も興味深い。
他人を気遣う人や道理が隅に追いやられ、特権とかやった者勝ちの嫌な世の中になって来たと思う今日この頃、良識があって誠実に生きている人たちのエピソードが心に沁みる。
「日本のテレビは肝心なことは報道しない」「政府は堂々と嘘を吐くし、新聞は政府の言いなりになってその嘘を垂れ流す。そんな勝手をさせないために投票へ行く」など、戦争を経験した世代の言葉は的を得ているな。過去はどうあれ、草のようなお年寄りになりたいと思った。癒されたいときにぴったりな作品だと思う。
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