川瀬七緒 著
<あらすじ>
美術解剖学を専攻し、凄腕の仕立て職人でもある服飾ブローカーの桐ヶ谷京介は、人を見れば骨と筋肉が透けて見える特技を持ち、服を見ればその人の受けた暴力や病気が分かった。2年前から、東京の高円寺南商店街で小さな仕立屋を営んでいる。
ある日偶然テレビの公開捜査番組を目にし、10年前に起きた身元不明の少女殺害事件の遺留品である奇抜な柄のワンピースに、京介は違和感を覚える。ワンピースは既製品ではなく、腕の立つ職人によって仕立てられていた。いくら10年前とはいえ、色柄デザインが時代遅れ過ぎるのだ。海外を4年も放浪して服飾の深層部を探求してきた京介は、この生地を調べれば少女の身元が判ると確信する。
翌日、同じ商店街にあるヴィンテージショップを訪ね、店を切り盛りする水森小春に公開捜査の動画を見せる。すると被害者少女のワンピースは、アメリカでしか流行らなかったアトミック柄だった。
京介は警察へ情報提供するも全く相手にされない。そこで事件に興味が湧いてきた小春と共に独自調査に乗り出すが・・・
<感想>
涙もろい京介とゲームオタクの小春が、アトミック柄の生地とベークライトの釦を手掛かりに、事件の真相を暴いていく。
著者お得意のユニークな奇人変人、つまりある分野に特化した人物を多彩に配置しており、その専門分野の造詣と魅力的なキャラクター造形、職人魂とその業界、貧困とか無国籍児などの社会問題が相俟って、期待を裏切ることなく最後まで楽しく読ませる。とても面白いミステリだと思う。
法医昆虫学捜査官シリーズが行き詰って来た感もあるので、新シリーズ開幕なのかな。だとしたら嬉しいな。
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