<あらすじ>
千葉県船橋市内の大学生で水産会社社長の息子・西岡卓也が撲殺された。
警察は目撃証言と凶器に残された指紋から、2年前に市川市内で起きた傷害事件で保護観察付執行猶予者となった倉田忠彦を重要参考人として取り調べる。
ところが、倉田は完全黙秘を貫き、動機が判らない。
勝浦生れの倉田は、小学生の頃に両親を交通事故で亡くし、妹と共に親戚に引き取られた。館山市の民宿・夕凪館の住み込み板前をしている。生真面目で物堅い人柄と評判だった。
捜査を進めると、夕凪館の息子で、西岡卓也の高校時代の同級生でもある友部雄二が、不審な溺死を遂げていた。
そして船橋市と館山市で起きた2人組の男による連続婦女暴行事件が浮上する。
更に2年前の傷害事件も、釈然としない点が出て来る。
単純な撲殺事件が不審死、傷害事件と連続婦女暴行事件まで絡み、複雑な様相を見せ始める・・・
<感想>
地縁や血縁が濃い地方都市を舞台に、警察の地道な捜査を丁寧に描き、容疑者・倉田忠彦の周辺で発生した一連の事件の真相と、倉田忠彦が背負っているものが明らかになって行く。
地元の名士とか有力者、代議士と官僚など、特権階級への忖度とその権力の利用が表面化して問題視されている今日、興味深い警察ミステリだと思う。
しかし、何の捻りも無いから面白味も無い。苛めと家庭内暴力、特権階級意識と人間のエゴなどが絡み、ありふれた話に思える。
それでも、生まれながらに有り余るほどの豊かさを与えられながら他人を踏みにじり、世間を徹底的になめきって暮らしている者に対して、警察が権力に忖度しないでしっかり捜査するのは痛快だった。
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